日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメハナバチ」の意味・わかりやすい解説
ヒメハナバチ
ひめはなばち / 姫花蜂
昆虫綱膜翅(まくし)目ハナバチ上科ヒメハナバチ科Andrenidaeのヒメハナバチ属Andrenaの昆虫の総称。全北区に産し、アメリカ大陸に約1000種、ユーラシア大陸に約800種を産し、日本には約160種を産する。一つの属にこれほど多数の種類が知られるものは生物界でもきわめて珍しい。体長には変化があるが、10~13ミリメートルくらいの種類がもっとも多い。ヒメハナバチの顔面には、触角基部の下端に左右2本ずつの縦走線があるのが大きな特徴、また雌バチの顔面には複眼に沿って浅くて広くくぼみ、微毛が密生した特殊な部分がある。体は黒色、外国産のものにまれに金属光沢を有する種類がある。体毛は多く、一般に淡色(白色ないし黄褐色)であるが、黒毛を密生するミカドヒメハナバチなどもいる。
地中営巣性で、ときに大きな集団をつくる。その一例として、近畿地方のある寺の庭に無数に営巣するウツギノヒメハナバチが知られている。おもに一化性で春に多いが、二化性のものや秋のみに出現する種類もいる。最近の研究によれば、フカイヒメハナバチは初夏に出現するヤマトヒメハナバチの春型であることが判明した。ヒメハナバチは一般に訪花性が狭く、ホオナガヒメハナバチはウグイスカグラを、ウツギノヒメハナバチはウツギの花を選好する。アメリカの砂漠には早朝の薄明時のみに開花する植物があり、これのみを訪花するヒメハナバチが知られている。
[平嶋義宏]