ファセリア(英語表記)Phacelia

改訂新版 世界大百科事典 「ファセリア」の意味・わかりやすい解説

ファセリア
Phacelia

ハゼリソウ科ハゼリソウ属Phaceliaはアメリカ大陸特産の100種ほどの一~多年草からなる属であるが,それらのうち花の美しい北アメリカ西部原産の数種がファセリアの名で園芸植物として栽植される。いずれも晩春から夏に開花する一・二年草である。ファセリア・カンパヌラリアP.campanularia A.Grayは高さ30cm,地ぎわで分枝して多少横に広がる。葉は卵円形で歯状の切れ込みがある。晩春,鐘状の濃いコバルト色の花を総状につける。おしべ5本が長く突き出て白色の葯がつく。秋にフレームで種をまき,小鉢に育てて越冬させたものを,鉢や花壇に植え込むとよい。排水のよい用土につくり,灌水をひかえて徒長して草姿が乱れないように栽培する。

 ハゼリソウP.tanacetifolia Benth.は,直立する茎の高さ60cmになり,9~17片に羽状深裂した葉をつけ,裂片はさらに羽裂する。全草に粗い毛があるが,枝先のものは腺毛である。5月には枝先にカタツムリ状花序をつけ,花をむらがらせ次々に開く。花は紫青色で,筒部が長く,花冠は5裂し,めしべとおしべはともに花冠から長く突出している。みつ源植物として栽培されることもある。ハゼリソウは明治初年に渡来しているが,現在はほとんど栽培されていない。しかし,花壇に種を秋まきして霜よけ下で保護すれば越冬するので,大花壇材料として好適である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファセリア」の意味・わかりやすい解説

ファセリア
ふぁせりあ
[学] Phacelia

ハゼリソウ科(APG分類:ムラサキ科)の一年草または多年草。北アメリカと南アメリカに約200種が分布する。よく知られるタナケティフォーリア(和名ハゼリソウ)P. tanacetifolia Benth.は茎が直立し、高さ0.3~1.2メートル、葉は大きく、羽状に中裂する。6~9月、淡青色筒状の小花を穂状につける。またカンパヌラーリアP. campanularia A.Grayは高さ15~30センチメートル、よく分枝して叢生(そうせい)する。花は径2センチメートル、鐘状で紺青色彩が美しい。欧米では花壇に利用されるが、高温多湿の日本では戸外での栽培は無理で、ガラス室かフレーム内で育てる。

[植村猶行 2021年7月16日]

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