一般の無機顔料では、フェロシアン化鉄を主成分とする青色顔料をさし、アイアンブルー、プルシアンブルー、ミロリーブルーなど種々の呼称がある。これに対し、セラミック顔料の分野では、酸化コバルトとカオリンあるいはろう石を配合し焼成したもの(焼貫呉須(やきぬきごす)ともいわれている)をさす。
(1)一般の無機顔料 当初、黄血塩(フェロシアン化カリウム)を原料としたが、入手難、コスト高から、副生の青酸を利用する。開発されたときはカリ紺青であったが、現在はアンモニウム紺青である。製法は、シアン化ナトリウムと硫酸鉄(Ⅱ)(硫酸第一鉄)の反応により、フェロシアン化ナトリウムをつくり、次にこれと硫酸鉄(Ⅱ)を、硫酸アンモニウムの存在下で反応させ、生成した白色沈殿を、硫酸酸性下で熟成し、塩素酸ナトリウムで酸化すると青くなる。この沈殿を濾過(ろか)、乾燥し粉砕する。結晶構造は立方晶、その化学式はNH4Fe[Fe(CN)6]。酸には強いがアルカリには弱い。粒子が大きくなるほど、緑み青から赤み青になる。印刷インキ、塗料、絵の具などに用いられる。
(2)セラミック顔料 CoO-Al2O3-SiO2系の青で、酸化コバルトにカオリンあるいはろう石を配合、1200℃に焼成して得られる。酸化コバルトを直接釉(ゆう)に加えても紺青の色は得られる。それにもかかわらず、この顔料をつくる目的は、少量の酸化コバルトを釉に直接加えても(釉の重量の2%ぐらい)、釉中に均一に分散させることはむずかしく、これを何かで希釈増量した形にして、釉中に分散させやすくすることと、いま一つは、酸化コバルトに混在する四酸化三コバルトCo3O4すなわち(CoOCo2O3)中の3価のコバルトが釉の発泡の原因となり、これを2価としておく必要があるためである。焼成中に生成するものはCoOAl2O3を主体とするスピネルで、コバルトは全量2価の状態で保持されている。海碧(かいへき)(セラミック顔料のコバルトブルー)と違って、カオリンやろう石を原料にするため、素地や釉との親和性がよく、下絵用、素地用にも使われる。石灰釉の場合は約450~700ミリミクロン付近まで吸収の谷となり、素地練り込みの場合より、紫に寄った青となっている。
[大塚 淳]
青色無機顔料の一種。1700年代初頭にドイツで発明され,のちフランスのミロリーMiloriによって製法が改良されたため,プルシアンブルーPrussian blue,ベルリン青Berlin blue,ミロリーブルーMilori blue,ベレンスなどとも呼ばれる。化学式FeK[Fe(CN)6],Fe(NH4)[Fe(CN)6],化学名はヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸鉄(Ⅲ)カリウム,またはヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸鉄(Ⅲ)アンモニウム。シアン化ナトリウムに硫酸鉄(Ⅱ)を反応させてフェロシアン化ナトリウムNa4[Fe(CN)6]とし,これに硫酸鉄(Ⅱ),塩化カリウム,硫酸アンモニウムを加えてフェロシアン化鉄(Ⅱ)塩の沈殿とし,塩素酸ナトリウムで酸化して製品とする。比重は1.7~2.0,耐光性,耐酸性は強いが,耐アルカリ性,耐熱性は弱い。着色力,耐油性は優れている。印刷インキ,塗料,合成樹脂,絵具,クレヨン,紙などに使用される。
執筆者:新井 吉衛
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ベルリンブルー,ベレンズともいう.λmax 470~480 μm の青色顔料の一種.ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸鉄(Ⅲ)カリウムKFe[Fe(CN)6]で示される組成に近い.ただし,原料としてナトリウム塩などを用いるとKはNaにかわる.また,原料の混合比によってKはFeと置換されることもある.濃い青色は,含まれる FeⅡ,FeⅢ両イオン間を-C≡N-によって橋かけされた構造をもっているため,両イオン間の電荷移動吸収が起こるものと考えられる.鉄(Ⅱ)塩にヘキサシアノ鉄(Ⅲ)塩を加えると生じるが,工業的にはむしろ鉄(Ⅱ)塩をヘキサシアノ鉄(Ⅲ)塩に加えたのち空気酸化して,色を調節する.ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウムに鉄(Ⅱ)塩を加えるとできるターンブルブルーも,この紺青と同じ構造をもつものと考えられる.着色力,耐光性,耐酸性は大きいが,耐熱性,耐塩基性は小さい.ペイント,インキ,クレヨンなどの顔料,リノリウム,紙などの着色料に用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…有機顔料は一般に毒性が小さい。無機顔料の生産量は有機顔料に比べ非常に大きく,日本工業規格(JIS)に規定されている無機顔料は,亜鉛華,鉛白,リトポン,カーボンブラック,鉛丹,べんがら,黄鉛(クロムイェロー),群青(ウルトラマリン),紺青,亜鉛黄(ジンククロメート),沈降性硫酸バリウム,およびバライト粉,二酸化チタンの12品目である。次に代表的無機顔料を色別にあげる。…
…1704年ベルリンの染色業者が輸入品であったウルトラマリン(群青)の代用になる濃い青色の鉄化合物を偶然発見し,プロシア青(プルシアンブルー)と呼んだ。ベルリン青,ベレンス,紺青などともいわれる。これは黄血塩と鉄(III)塩との反応で得られるが,赤血塩と鉄(II)塩との反応でも同様の青色顔料が得られ,こちらはターンブルブルーと呼ばれた。…
※「紺青」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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