ファース(John Rupert Firth)(読み)ふぁーす(英語表記)John Rupert Firth

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ファース(John Rupert Firth)
ふぁーす
John Rupert Firth
(1890―1960)

ロンドン学派言語学の創始者。ロンドン大学オリエント・アフリカ研究所で、イギリス初の一般言語学教授となる(1944~1956)。英国フィロロジー学会会長(1954~1957)。その学説は、(1)意味論における「スペクトル」と「場面の脈絡」、(2)音韻論における「プロソディー分析」に集約される。(1)では、言語を内容と表現に二分せず全一体としてとらえ、それを言語学というプリズムを通して音声、音韻・統語、場面などの数個のレベルに「分光」して扱うことを主張、言語の意味の全体的な把握は場面の脈絡において初めて可能であるとした。これは即物的な場面の脈絡でなく、分析のための抽象的枠組みである。(2)では、子音母音など分節音の範囲を超えて音節形態、文などと関連して機能する、強勢、音高、リズムなどを音韻分析の基礎に据えた。著書に『Speech』(1930)、『The Tongues of Men』(1937)があり、数多い論文の大部分は『ファース言語論集』に収録されている。

大束百合子 2018年7月20日]

『F・R・パーマー編、大束百合子訳註『ファース言語論集2』(1975・研究社)』『大束百合子訳註『ファース言語論集1』(1978・研究社出版)』『石橋幸太郎他編『現代英語学辞典』(1975・成美堂出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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