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音韻論 おんいんろんphonology; phonemics

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

音韻論
おんいんろん
phonology; phonemics

音声学的観察で確認した音声がどういう音韻的単位に該当し,そのような単位がいくつあり,いかなる体系・構造をなしており,いかなる機能を果しているかなどを研究する学問。音韻論的解釈には正確な音声学的観察が必要であり,逆に正しい音韻論的解釈により音声学的事実がよりよくみえてくることから,音声学と音韻論は補い合うものであるといえる。音韻的単位の最小のものは音素である。東京方言ではその音素が1つないし3つでモーラを形成し,モーラが1つないし3つで (音韻的) 音節を形成し,その音節 (連続) のうえにアクセント素がかぶさって形式の音形を構成している。音韻を音素の代りに使う人もいるが,音韻は以上の音韻的単位の総称としたほうがよい。この立場に立てば,音韻論 phonology音素論 phonemicsよりも広い概念で,少くともその他に音節構造論とアクセント論を含むことになる。音韻論にも,他の分野と同様,共時音韻論と史的音韻論 (音韻史) がある。また音声学と音韻論を総称して「音論」と呼ぶこともある。

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デジタル大辞泉の解説

おんいん‐ろん〔オンヰン‐〕【音韻論】

phonology》言語学の一部門。言語のアクセントなどをも含む)を記述し、その歴史的変化の過程、そこにみられる原則を研究する学問。また、ある言語の言語音音素という単位に抽象して、その構造や体系を記述する共時論的研究についても用いられる。→音素論(おんそろん)

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百科事典マイペディアの解説

音韻論【おんいんろん】

言語学の一部門。ある言語の音素の数,それらの結合の仕方,機能,体系などを扱う。普通は共時論的研究を対象とし,歴史的な研究は音韻史,史的音韻論といわれている。音声学音韻学とは異なる。
→関連項目有坂秀世形態論言語学言語類型論文法モーラ

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世界大百科事典 第2版の解説

おんいんろん【音韻論】

音韻は言語音声から意識された要素として抽出された最小の単位で,フォネームphonemeの訳語として音素と同じ意味に用いられることが多い。音素は音声の最小単位たる単音に対応する分節音素と強弱や高低アクセントのように単音に対応しない超分節音素に分けられるが,このうち分節音素に限り音韻と呼ぶこともある。また中国では昔から,漢字の字音を構成する単位を音韻と称し,音韻学と呼ばれる言語音に関する学問が行われていた。

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大辞林 第三版の解説

おんいんろん【音韻論】

構文論・意味論などと並ぶ、言語学の一分野。言語音の機能や体系・構造を研究する。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

音韻論
おんいんろん
phonology

音素について研究する言語学の一部門で、アメリカ言語学では音素論phonemicsとよぶ。音韻論では、(1)音素の設定、(2)音素の体系、(3)音素の結合などが取り扱われる。
(1)音素の設定。カク[kak]とタク[tak]という語の意味の区別は、[―ak]という同じ音声環境に現れる音声部分[k]と[t]の相違によっている。これらの音は、より小さな連続した音声単位に分解できないから、音素である。このように、一つの音素を除いて、他の部分が同じであるような語の組を最小対立という。最小対立を捜し出すことにより、音素を取り出すことができる。サク[sak]、ナク[nak]、ハク[hak]、マク[mak]、ヤク[jak]、ラク[rak]、ワク[wak]から、音素 /s,n,h,m,j,r,w/ が求められる。ところが、キク[kik]とシク[ik]の最小対立から、音素 /k/ と // が得られる。さて、[s]と[]であるが、[s]のほうはサスセソの母音[a,,e,o]と結び付くのに、[]のほうは残りの母音[i]の前にだけ現れる。これを相補的分布という。相補的分布をなす類似した音声は、同一の音素に帰属するとされる。したがって、歯茎音[s]と硬口蓋(こうがい)歯茎音[]はともに無声の歯擦音であり、相補的分布をなすから、同一音素 /s/ の異音とみなされる。このように音素が具体的音声の形をとったものを異音という。
(2)音素の体系。母音 /a/ は口の開きが大きく、聞こえが大である。母音 /i/ と /u/ は口の開きが狭く、聞こえは小さい。 /i/ では舌が硬口蓋へ向かって上がるので、口の中が二分され、口腔(こうこう)に二つの小さな共鳴室ができる。このため鋭い音となる。これに対し /u/ では、舌が奥へ退き、口腔内に長い共鳴室がつくられるので、鈍い音が出る。子音 /k/ での口の開きは、子音 /t/ , /p/ に比べると、広く、聞こえも大となる。子音 /t/ では、歯茎に舌が接し、口腔内が二分されるので、鋭い音をたてるが、子音 /p/ では、唇を閉じるだけで、その奥に長い口腔の共鳴室ができる。このため鈍い音を発する。いま、聞こえの小さい音を上に、大の音を下にし、鋭音を左に、鈍音を右に置けば、

のような音素の体系を取り出すことができる。すなわち、基本的母音 /a,i,u/ と基本的子音 /p,t,k/ は、同じように三角の体系を組むことがわかる。
(3)音素の結合。英語のplay[plei]「遊ぶ」、clay[klei]「粘土」のような語には、 /pl-/ と /kl-/ という語頭の子音結合が現れるのに、 /tl-/ という結び付きはない。日本語のワの子音 /w/ は、母音 /a/ の前にしかこない。このように音素の現れる位置や音素相互の結合の仕方には、ある制限がみられる。この制限は言語により異なる。
(4)韻律的特徴。音の強さ、高さ、長さを韻律的特徴という。英語のincrease[nkri:s]「増加」と[inkr:s]「増加する」では、強さアクセントの位置により意味が変わる。日本語のカ「赤」とア「垢」では、高さアクセントの位置により意味が異なる。また、キタ[kita]とキイタ[ki:ta]は別な語である。語の意味を区別する音の強さ、高さ、長さの違いのなかにも、音素としての働きをみることができる。
(5)最近の生成音韻論は、音素を否定し、そのかわりに基底形をたて、これに音韻規則をかけて派生形を導く方式を考えている。たとえば、/divn/ という基底形を設定し、名詞語尾-ityがくれば、→iとしてdivinity[diviniti]「神性」となり、語尾をとらなければ、→ai としてdivine[divain]「神の」が導き出されると説明する。[小泉 保]
『ヨーアンセン著、林栄一監訳『音韻論総覧』(1979・大修館書店)』

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世界大百科事典内の音韻論の言及

【形式言語】より

…その理由で,人工の言語であるプログラミング言語に深く関わることになる。自然言語の分析に関する学問には,音素とその結合を扱う音韻論phonology,音素結合あるいは語の形態を論ずる語形論morphology,文の構成規則を明らかにする構文論syntax,および文の意味を扱う意味論semanticsがある。これらのうち,構文論の分野で1956年ころ,アメリカの言語学者チョムスキーが構文規則に対して数学モデルを与えたことにより,言語が厳密に形式化されるにいたった。…

【言語学】より

…しかし,どの言語も人間の言語である限り一定の共通性を有しているはずであり,したがって,個々の言語の研究が人間言語一般の本質解明に寄与するわけであり,また,他の言語の研究成果,とりわけ他の言語の研究で有効であることがわかった方法論が別の言語の研究においてもプラスになるわけである。 個別言語の構造の研究は,言語そのものの有する三つの側面に応じて,〈音韻論〉〈文法論〉〈意味論〉に分けてよい。
[音韻論]
 音韻論的研究は,その言語がどのような音をどのように用いてその音的側面を構成しているかを研究する。…

【自然言語処理】より

…これを以下に記す。(1)音韻論 音素,アクセントなどから文字あるいは単語がどのように構成されるかについての理論であり,音声処理においては基礎となる。(2)形態論 文字から単語が構成される枠組みについての理論であり,日本語のベタ書きテキストから単語を切り出す形態素解析の基礎となる。…

【生成文法】より

…永い文法研究の歴史の中で,この発想はまことに斬新で画期的なものであり,以下に概観するその具体的な枠組みとともに,やがて多くの研究者の依拠するところとなり,これによって文法とくにシンタクスの研究は急速に深さと精緻さとを増して真に科学といえる段階を迎えたといってよい。最初期には意味を捨象して文の形だけに注目していたが,その後,意味と音を併せ備えたものとしての文の生成をめざすようになり,普通にいう文法(シンタクス,形態論)のほかに意味論音韻論も含めた包括的な体系を(しかもチョムスキーらは,言語使用者がそれを,自覚はしていなくとも〈知識〉(心理的実在)として備えていると見,その〈知識〉と〈それに関する理論〉の両義で)〈生成文法(理論)〉と呼んでいる。意味論や音韻論においても新生面を開いてきた。…

【トルベツコイ】より

…革命を逃れてロストフ大学,ソフィア大学に転じ,22年にはウィーン大学教授。プラハ言語学派の中心人物の一人で《音韻記述への手引Anleitung zu Phonologischen Beschreibungen》(1935),《音韻論要理Grundzüge der Phonologie》(1939)によりプラハ言語学派音韻論の方向を定めた。 1936年に学術誌に発表した論文《音韻対立のための理論の試み》の前後から〈対立〉をとらえる理論を模索し,これが晩年の理論課題となった。…

※「音韻論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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