改訂新版 世界大百科事典 「マロロス憲法」の意味・わかりやすい解説
マロロス憲法 (マロロスけんぽう)
1899年に制定されたフィリピンで最初の憲法。正式名称はフィリピン共和国憲法。フィリピンでは1896年8月からスペインの植民地支配を打倒する独立革命が開始され,アギナルドを大統領とする革命政府は,98年9月ルソン島中部のブラカン州マロロス町で革命議会(通称マロロス議会)を開催した。同議会は大地主,大商人,弁護士などの大資産家階級に牛耳られ,彼らは革命の指導権を自らの統制下に置くために,議会の権限を絶対化した憲法制定を急いだ。これには大統領顧問マビニの強力な反対があったが大勢に押し切られ,99年1月21日,この憲法が発布された。同憲法に基づいて,同1月23日には第1次フィリピン共和国,通称マロロス共和国が発足した。同憲法は前文と14条101項および1追加項目からなり,三権分立,代議制,基本的人権の保障,国家と宗教の分離などを定めた近代的ブルジョア憲法である。しかし,先述の制定目的から,三権分立とはいえ,立法府の権限が圧倒的に大きい点に特徴がある。
執筆者:池端 雪浦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報