マンチェスター・シップ運河(読み)まんちぇすたーしっぷうんが(英語表記)Manchester Ship Canal

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

マンチェスター・シップ運河
まんちぇすたーしっぷうんが
Manchester Ship Canal

イギリス、イングランド中西部、マージー河口エルスメア港とマンチェスターを結ぶ航洋船運河マージー川とマンチェスターを結ぶ艀(はしけ)用運河を経営していたブリッジウォーター・ナビゲーション社(のちマンチェスター・シップ運河会社と改称)によって計画され、1887年に着工、1894年1月1日に開業した(ビクトリア女王臨席の開業式は同年5月21日)。長さ約58キロメートル。運河入口のイースタム閘門(こうもん)ほか4か所の閘門があり、運河入口とマンチェスター間の水位差18.4メートルを克服する。イースタム閘門より約8キロメートルの地点にあるスタンロウまでは1万5000重量トン、最奥部の、マンチェスターに隣接するソーフォード・ドックスまでは1万2500重量トンの船の入港が可能となった。この運河の完成によって、大型の外航船が直接マンチェスターまで入れることになり、内陸の工業都市マンチェスターは一時はイギリス有数の港湾荷役量をもつ都市となり、運河沿岸にも多くの工場が立地した。第二次世界大戦後もその繁栄は続き、1954年には原油タンカーの大型化とともに入口のイースタムには3万重量トン用の石油専用のドックも建設された。しかし、外航船の大型化傾向は運河をしだいに使いにくいものにし、1970年代以降はもっぱら海側のイースタム―ランコーン間に大部分交通が集中して、この区間のドックが石油、あるいはコンテナ・ターミナルとして繁栄するようになった。改修工事とシステムのコンピュータ化がなされ、年間726万トンの貨物取扱量がある(2005)。

青木栄一・青木 亮]

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