改訂新版 世界大百科事典 「ムギハモグリバエ」の意味・わかりやすい解説
ムギハモグリバエ (麦潜葉蠅)
wheat leaf miner
双翅目ハモグリバエ科に属する昆虫のうち,幼虫がムギの葉に潜り食害するハエの総称。体長2mm前後のものが多い。ヤノハモグリバエAgromyza yanonis,ムギクロハモグリバエA.albipennis,ムギスジハモグリバエPhytomyza nigra,ムギキイロハモグリバエCerodonta denticornis,ムギキベリハモグリバエPhytobia lateralisなどがムギに潜入する。
成虫は,ほとんどの種で4~5月ころ発生するが,年1回(ヤノハモグリバエ)のものから,数回(ムギスジハモグリバエ)のものまである。成虫の産卵管は硬く,葉肉内に産卵する。幼虫は葉肉内に潜入し食べるが,食痕は種によって一定で,その形でも種の同定ができるくらいである。線状のもの,不整形で葉の先端から食べる種,中央よりも基部から食べていく種などがある。蛹化(ようか)は,土の中で行うもの,葉内で行うものなどがある。ヤノハモグリバエは,おもにオオムギに寄生する。1枚の葉に10~数十匹の幼虫が潜入するので先端が枯れて白くなる。ムギスジハモグリバエはコムギを食害するが,スズメノテッポウなどイネ科の植物にも寄生する。年数回発生する。ムギクロハモグリバエはオオムギに被害を与える。年2~3回発生するが,さなぎで越冬し4月下旬に出現する。
執筆者:篠永 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報