改訂新版 世界大百科事典 「モンシロドクガ」の意味・わかりやすい解説
モンシロドクガ (紋白毒蛾)
Euproctis similis
鱗翅目ドクガ科の昆虫。翅の開張2~3cm。一般に夏の成虫は小型。体翅とも白色。腹部の後半は橙褐色。前翅の翅底部と後角近くには黒紋をもつが,個体によってはほとんど消失する。触角は櫛歯(くしば)状だが,雌では櫛歯が短い。日本本土から朝鮮半島を経て,ユーラシア大陸に広く分布する。幼虫は黒色,背面は帯状に橙褐色,黒色部の側方に白紋を連ねる。バラ科やブナ科など各種の葉を食べる害虫であるとともに,2齢以降には毒針毛を生じ,これが繭につけられるため,成虫の体にも毒針毛が無数に付着する。したがって,この毛がヒトの皮膚にささると炎症を起こす。とくに雌が灯火に飛来し,壁などにぶつかって鱗粉とともに毒針毛が脱落して,皮膚に触れたとき,被害が大きい。本種の幼虫のなかで,黄色型をモンシロドクガモドキという別種とされていたが,気候による体色の変化にすぎない。近畿以西では黄色型が,それより北では黒色型が出る。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報