改訂新版 世界大百科事典 「モン族」の意味・わかりやすい解説
モン族 (モンぞく)
Mon
ミャンマー(旧ビルマ)南部のデナッセリム川流域,イラワジ川デルタ地帯,およびタイの中部,西部に散在する民族で,アウストロアジア語族のモン・クメール語族に属するモン語を使用する。現在総人口40万あまりの少数民族になっているが,かつてはインドシナ半島にいくつかの王国を成立させた大民族であった。タイのドバーラバティ,ハリプンジャヤ,ビルマのペグーなどがその例であるが,11世紀以降,南下してきたタイ族,ビルマ族の攻略をうけて衰退し,1757年にビルマによって滅ぼされた。早くからヒンドゥー文化,上座部仏教(小乗仏教)を取り入れ,またインド起源のパーリ文字を改良してモン文字を作り出すなどして高度の文化を開花させた。モン族は杭上家屋に住み,水稲耕作を行う一方,ヤムイモ,サツマイモなどの栽培も行っている。古くからの上座部仏教徒であるが,同時にヒンドゥー的な神々テワタウも信仰の対象にしている。また精霊カロクkalokについての観念ももち,屋敷のカロク,祖先のカロクなどへの供犠を行っている。ある種のカロクに起因する病気の治療のため,呪術的儀礼も発達している。
執筆者:小野沢 正喜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報