改訂新版 世界大百科事典 「ルバーイヤート」の意味・わかりやすい解説
ルバーイヤート
rubā`iyāt
ペルシアの四行詩ルバーイーrubā`īの複数形で〈四行詩集〉を意味する。ルバーイーは元来民謡に端を発したといわれ,ペルシア独自の詩形である。この詩形は一般に第1,第2,第4の各半句(ミスラー)の脚韻が互いに押韻し,ときにはすべての脚韻が押韻することもある。韻律は長音と短音を組み合わせたハザジ・ムサッマムの変形が主として用いられた。
ルバーイーはペルシアのほとんどすべての詩人に用いられた詩形で,10世紀以降のペルシア文学に多く現れるが,ルバーイヤート詩人として名高いのは,アブー・サイード・ブン・アビー・アルハイルAbū Sa`īd b.Abī al-Khayr(967-1049),バーバー・ターヒルBābā Ṭāhir(生没年不詳,11世紀の人),アンサーリーal-Anṣārī(1005-89)とウマル・ハイヤームである。前3詩人は神秘主義者で神秘主義思想の表現にこの詩形を用いたが,ウマル・ハイヤームはこの詩形で運命,酒,美女などをよんだ。19世紀半ばにイギリスの詩人E.フィッツジェラルドの名訳が発表されて以来,世界的に有名になり,ルバーイヤートの代表的詩人になった。
執筆者:黒柳 恒男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報