同一音または類音をもって韻を踏む修辞法。語頭にあるものを頭韻(アリタレーション)、語尾にあるものを脚韻(ライム)、母音のみの押韻、類音の一致を半諧音(かいいん)(アソナンス)という。
詩の韻律に厳しかった萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)は、和歌をはじめとするわが国の詩歌にも、頭韻、脚韻、畳韻、対韻などの押韻様式があるが、それは西欧の場合のように意識的なものではなく、自然発生的なものであると規定し、頭韻歌の典型として、「善(よ)き人の善しと善く見て善しと言ひし吉野よく見よ善き人よく見つ」、脚韻の例として句節の終わりにnoの音を重ねている「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜を独りかも寝む」をあげている。
元来、日本語は押韻、とくに脚韻には不適な言語とされてきたが、昭和になってから、佐藤一英(いちえい)のような詩人は『新韻律詩抄』(1935)、聯組詩(れんそし)『空海頌(そらうみのたたえ)』(1939)などの詩集において、頭韻、脚韻を踏んだ四行定型詩を試みている。「鐘鳴れど山は眠れり/神ませど大和(やまと)のほとり/語るなく八重桜散り/かたほとりやんごとなかり」。また、九鬼(くき)周造『文藝(ぶんげい)論』(1941)のなかの韻律論を継承した中村真一郎、福永武彦(たけひこ)などのマチネ・ポエティクの詩人たちは、範を西欧の詩人にとった定型押韻詩を実践した(『マチネ・ポエティク詩集』1948)。
西欧における定型押韻詩の歴史は古く、ボードレールの『悪の華』は脚韻がきちんと踏まれた定型詩である。上田敏の名訳によって名高いベルレーヌの「秋の歌」の冒頭の3行「Les sanglots longs/Des violins/De l'automne」には、lとnの頭韻とoの半諧音とが反復され、それが美しい諧調をなしている。しかし、一方においてはシェークスピアの劇詩のように無韻詩(ブランク・バース)で書かれたものもあり、またフランスにおいては19世紀末の自由詩運動以後、押韻定型詩にかわって自由詩が詩の主流を占めるようになった。
[窪田般彌]
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…脚韻の配置の仕方には,2行ずつ同じ韻を並べていく平韻rimes plates(英詩では対韻couplet)と,2種の韻を1行おきに交錯させる交韻rimes croisées(英詩では交互韻cross rimes)と,1種類の韻をもつ2行の間へ第2の種類の韻をもつ2行が割りこんだ形となる抱擁韻rimes embrasséesとがある。また中国の絶句の押韻法は,起承転結の4行のうち転を除いた他の3行に同一の脚韻を置くものであるが,このように脚韻は詩型とも密接に関連する。広義の韻にはこのほか,語頭の音韻を合わせる頭韻alliterationや,語の位置を問わず類似音を重ねる半諧音assonanceがあり,これらは日本の詩歌にもいくつかの用例が見られる。…
…介母の(M)を韻頭,Vを韻腹,(C/V)を韻尾ということもある。いわゆる〈漢詩〉などを通してわれわれにも親しい中国詩の〈押韻(おういん)〉とは,このうち韻母すなわち(M)V(C/V)もしくはV(C/V)の部分を等しくするもの同士を,定められた詩句の末に置き,相似音が一定間隔をおいて繰り返し現れることを楽しむ技法である。 声調のカーブを追加説明すれば1は55,2は35であって,共通語ではこの1,2,3,4の四つが〈四声〉とも呼ばれて声調の基本部分を形づくる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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