日本大百科全書(ニッポニカ) 「七人塚」の意味・わかりやすい解説
七人塚
しちにんづか
横死した7人を埋めた塚や墓碑の由来を語る伝説。その多くは、戦(いくさ)に敗れて落ち延びてきた武者の自刃とか戦傷死など、非業の死を伴っている。天竜川水系の山塊地に多く、愛知県北設楽(きたしたら)郡や岐阜県などに武田氏や土岐(とき)氏の落ち武者の口碑が伝えられる。名古屋市熱田(あつた)神宮の裏の七塚は平将門(まさかど)とその影武者の霊を祀(まつ)る。千葉市にあるという7基の塚は牛頭(ごず)天王を祀り、やはり将門の武者とも影武者ともいう。村境や山峡、峠などの境に多いのは、御霊(ごりょう)(横死者の霊)をもって悪霊を防ぐ境の神の祭場であるからとする柳田(やなぎた)説がある。非業の死のモチーフは、七人塚に限らず、八人塚や十三塚などにも残されている。
[渡邊昭五]
『「七塚考」「境に塚を築く風習」(『定本柳田国男集12』所収・1965・筑摩書房)』