上一段活用(読み)カミイチダンカツヨウ

デジタル大辞泉 「上一段活用」の意味・読み・例文・類語

かみいちだん‐かつよう〔‐クワツヨウ〕【上一段活用】

動詞活用形式の一。語形が、五十音図の「イ」段の音(または、それに「る」「れ」「よ」「ろ」のついた形)だけで語形変化するもの。「エ」段だけで語形変化する下一段活用に対していう。文語口語ともにあり、例えば、「見る」が「み・み・みる・みる・みれ・みよ(文語)みろ(口語)」と変化する類。文語では、「着る」「似る」「見る」のような語幹語尾区別のつかないものと、その複合語(「かえりみる」など)に限定されるが、口語では、これらのほか、文語で上二段活用の「起く」「落つ」なども基本形が「起きる」「落ちる」の形に変化して上一段活用に含まれる。
[補説]五十音図の「ウ」の段を中心とし、「イ」の段を上一段、「イ・ウ」の段を上二段、「エ」の段を下一段、「ウ・エ」の段を下二段という。なお、活用語尾というときは、「る」「れ」「よ」「ろ」の上の音についていう。

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精選版 日本国語大辞典 「上一段活用」の意味・読み・例文・類語

かみいちだん‐かつよう‥クヮツヨウ【上一段活用】

  1. 〘 名詞 〙 動詞活用の型の一つ。文語では「着る・似る・見る」など、口語ではそのほか「起きる・落ちる・浴びる」などの活用をいう。未然・連用形が一音節でイ段、または未然・連用形の末の一音節がイ段で、他の活用形はこれに「る・れ・よ(ろ)」を添えた形。五十音図のイ段だけに活用するので、エ段だけに活用する下一段に対していう。文語でこの活用をもつものは二十余で、未然・連用形が一音節の語か、これを含んだ複合語である。口語では、文語上一段の動詞のほか、文語で上二段であった動詞もその大部分が含まれる。上二段の上一段化は鎌倉時代頃に始まり、近世後期に江戸語で一般的になる。そのほかサ変動詞のうちザ行の「感ず」「信ず」なども、「感じる」「信じる」のように上一段化した形が広まった。〔広日本文典(1897)〕

上一段活用の補助注記

本居春庭が「詞の八衢」で「一段の活」という名を用いているが、その後、林圀雄が「詞の緒環」で下一段に対して「上一段の活」を説いた。

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百科事典マイペディア 「上一段活用」の意味・わかりやすい解説

上一段活用【かみいちだんかつよう】

活用

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世界大百科事典(旧版)内の上一段活用の言及

【活用】より

…日本語で,事態の叙述にあずかる語が,一定の用法に従って,体系的に語形を変化させること。語形とは音節連続の形式についていい,普通はアクセントに及ばない。英・仏語その他ヨーロッパ語のコンジュゲーションconjugationも語形の体系的変化であるが,その変化の示す意味が,人称,数,時,法,相などに関するのに対して,日本語の場合では,表に示すように,単独に用いられる際の切れ方,続き方の差(終止,中止,命令,連体,連用等),また後に結合する付属語の種類に応じて語形が変化する。…

※「上一段活用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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