下咽頭がん(読み)かいんとうがん(その他表記)Hypopharyngeal Cancer

家庭医学館 「下咽頭がん」の解説

かいんとうがん【下咽頭がん Hypopharyngeal Cancer】

[どんな病気か]
 喉頭(こうとう)(「のどぼとけ」のあるくびの部分)のすぐ後ろの、食べ物の通り道である下咽頭にできるがんで、最近、増加しています。大部分が50歳以降の発症で、男性が女性よりも約4倍多くなっています。頸部(けいぶ)リンパ節(せつ)への転移をおこしやすく、進行した状態で見つかることが多いものです。
[症状]
 最初は、のどのイガイガ感、異物感、閉塞感(へいそくかん)など、かぜと同じような症状です。ものを飲み込むときに「魚の骨が刺さったような」痛みをともなうことが多いものです。
 進行すると、嗄声(させい)(声がれ)、血(けっ)たん、耳への放散痛(耳に響く痛み)、食べ物の通過障害などがおこります。
 まれに、症状が頸部のリンパ節の腫(は)れだけのこともあります。
[原因]
 長年の過度の飲酒喫煙による慢性刺激が原因とされています。下咽頭がんになった人の70%は、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上、サケ指数(日本酒に換算した1日飲酒合数×飲酒年数)が60以上です。
 そのほかに、鉄欠乏性貧血(「鉄欠乏性貧血」)も発症に関係するといわれています。
[検査と診断]
 内視鏡(ファイバースコープ)で見ればほとんどは診断できます。確定診断には、組織を一部採取して顕微鏡で調べる病理組織診が行なわれます。また、造影X線検査、CT、MRIなどでがんの広がりも検査します。
[治療]
 早期であれば、放射線治療で治すことが可能ですが、進行すると手術が必要となります。
 手術 ほとんどは、喉頭も一緒に取る拡大切除が必要となります。リンパ節も清掃(頸部郭清(けいぶかくせい))します。
 切除後は、腸管や皮膚を利用した咽頭再建術(いんとうさいけんじゅつ)を行ないますが、約2週間で口から食事をとることができるようになります。
 状況によっては、術後に放射線治療、化学療法を追加することがあります。
[予防]
 禁煙を守ることはもちろん、飲酒も適度にひかえるように心がけることが予防につながります。また、鉄欠乏性貧血も治療しておくほうがよいでしょう。
 かぜとよく似た症状が、1か月以上も続くようなら、耳鼻咽喉科(じびいんこうか)を受診しましょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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