不要因証券(読み)ふよういんしょうけん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「不要因証券」の意味・わかりやすい解説

不要因証券
ふよういんしょうけん

手形小切手のように、その原因関係が不存在・無効であっても、その効力には影響がない有価証券をいう。たとえば、約束手形為替(かわせ)手形、小切手などは、一定金額の支払請求権を表章する有価証券であるが、これらの有価証券に表章されている権利は、手形の作成などによって新しく成立した権利である。よって、その証券作成行為の原因となった実質関係上の債権とはまったく別個の権利である。たとえば、原因関係上の商取引によって生じた債務の支払いのために振り出された約束手形においては、たとえ原因関係が不存在・無効・取消・消滅したとしても、約束手形は有効に成立していることになる。ただし、原因関係が欠缺(けんけつ)したことは、そのような約束手形授受の当事者間では、人的抗弁として、手形の支払いを拒みうる事由として認められている。すなわち、手形の善意の第三取得者には主張しえないのである。不要因証券はまた無因証券ともいわれる。

[永井和之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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