中世人(読み)ちゅうせいじん

改訂新版 世界大百科事典 「中世人」の意味・わかりやすい解説

中世人 (ちゅうせいじん)

鎌倉室町時代の人々で,かなり全国的に見られる特徴として,低身長で脳頭蓋では強度の長頭性,顔面では低顔性が強く,鼻根部が扁平で顕著な歯槽性突顎(そっ歯)を示すことなどが知られている。鈴木尚による鎌倉市材木座遺跡出土人骨(1333年(元弘3)の新田義貞による鎌倉攻めの犠牲者と推定されている)に関する研究を通じて,初めてこうした時代的特徴が明らかにされた。その後,東京の地下鉄丸の内線の工事に際して出土した室町時代の人々にも類似の特徴が見られること,さらに熊本県の尾窪遺跡や山口県の吉母浜遺跡,神奈川県の長勝寺遺跡などで報告された中世人骨でも,その程度の差はあれ同様の傾向を示すことが明らかとなり,かなり汎日本的な時代特性であることが知られるようになった。近年,沖縄で発見されたグスク時代の人骨でも長頭性が指摘されているが,なぜこのような特徴が中世期に広く全国的に見られるのか,その理由については良くわかっていない。かつては安定した特徴と見なされていた頭型(長頭か短頭か)が,実はかなり変化しやすいものであるということが,こうした歴史時代の人骨研究によって明らかにされた。そして日本では古墳時代以降,中世期にかけて長頭性が強まり,その後,変化の方向が逆転し,近世から現代にかけては短頭化が進んできたことがわかっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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