中国・太平洋島嶼国経済開発協力フォーラム(読み)ちゅうごくたいへいようとうしょこくけいざいかいはつきょうりょくふぉーらむ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

中国・太平洋島嶼国経済開発協力フォーラム
ちゅうごくたいへいようとうしょこくけいざいかいはつきょうりょくふぉーらむ

中国太平洋島嶼国との関係強化を図るために、中国の提案により2006年に設立された国際会議。双方の投資、貿易、観光、漁業協力などの促進を目的としている。中国が南太平洋地域における影響力拡大を目的として、同地域の島嶼国に対し経済支援を行うための枠組みともいわれる。2016年1月まで、2回の閣僚級以上の政府高官による公式会合のほか、中国の国有企業関係者らが参加する商談会が不定期に開かれた。2006年4月にフィジーの首都スバで開かれた第1回会合には、中国首相の温家宝(おんかほう)と、同地域で中国と国交のある8か国(ミクロネシア連邦サモアパプア・ニューギニアバヌアツクック諸島トンガニウエ、フィジー)の首脳らが出席した。中国は総額30億元(約450億円)の優遇借款を参加国に提供するとともに、2000人の研修員の受け入れを表明した。2013年11月に広州(こうしゅう)で開かれた第2回会合には、中国副首相の汪洋(おうよう)が出席し、インフラ整備に10億米ドルの低利融資のほか、2000人の技術研修員の受け入れ、医療施設供与、中国人医療チームの派遣なども決まった。中国が太平洋地域を支援する背景には、同地域で積極的に外交を展開する台湾の動きを牽制(けんせい)する目的のほか、日本太平洋諸島フォーラムによる定例会議「太平洋・島サミット」に対抗する思惑もあるといわれる。

[矢板明夫 2016年7月19日]

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知恵蔵 の解説

中国・太平洋島しょ国経済開発協力フォーラム

太平洋諸国との関係を強化するため、中国政府が中心となって開催する協力会議。2006年4月にフィジーの首都スバで第1回会合が開かれた。開会式には中国の温家宝首相が出席し、中国は太平洋諸国へ総額30億元(約450億円)の経済支援を実施すると共に、太平洋諸国の対中債務を帳消しにすると発表した。中国にとっては南太平洋地域での影響力を高める狙いがある。このフォーラムは中国政府が提案したもので、中国による太平洋諸国支援の公式ルートになる可能性がある。もともと太平洋地域は中国と台湾が支持国の獲得競争で火花を散らせており、太平洋諸国からみれば両者の小切手外交によって経済的に潤う仕組みが出来上がっている。域内の国連加盟国12カ国は、中国派と台湾派で二分されており、温首相のフィジー訪問はこうした均衡状態を崩す狙いがある。さらに中国の太平洋諸国進出には、日本が中心となって開催している日本と太平洋諸島フォーラム(PIF)との定例会議「太平洋・島サミット」を牽制する狙いもある。結果的に太平洋諸国は、中国・台湾・日本の三者を天秤にかけながら、経済支援を引き出すことが可能となった。

(竹田いさみ 獨協大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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