バヌアツ ばぬあつ Republic of Vanuatu 英語 République du Vanuatu フランス語 Ripablik blong Vanuatu ビスラマ語
ソロモン諸島の南東、フィジーの西側に位置するメラネシアの群島国家。正称バヌアツ共和国Republic of Vanuatu。国土面積1万2189平方キロメートルは新潟県の広さに相当する。人口は23万4023(2009国勢調査)、26万5000(2013国連推計)で、1980年7月にイギリス・フランス共同統治領から独立した。英語、フランス語のほかにビスラマ語とよばれるピジン英語の三つが公用語。首都はエファテ島のビラ(ポート・ビラ)で、全人口の1割超の4万4040人(2009)が住んでいる。
記録ではこの諸島に最初に足を踏み入れた西洋人は、ポルトガル人のペドロ・フェルナンデス・デ・キロスPedro Fernández de Quirós(1565―1615)で、1606年4月27日にエスピリツ・サント島に上陸している。この地域をニュー・へブリデス諸島と命名したのは、1774年にこの地を訪れたイギリス人航海者ジェームズ・クックである。その後、イギリス、フランスの領有権争いが続き、1906年に両国が共同統治condominium(英仏共同統治)するという世界でも珍しい形態での合意が成立。この統治方法は、イギリス統治区とフランス統治区を分けたのではなく、たとえばイギリスが英語教育の小学校を建設した隣に、フランスがフランス語教育の小学校を建てるというように、二重統治ともいえる複雑な実態であった。これがフランス語教育系と英語教育系の住民間に思考ギャップやコミュニケーションギャップを引き起こした。
メラネシア(南西太平洋)の島国で、英連邦に加盟。オーストラリアの東沖に点在する80余の火山島、サンゴ島から成る。首都はエファティ島のポートビラ。総面積は新潟県と同じほど。人口は約25万(2013年)で、メラネシア系が93%を占める。主要言語はビシュラマ語(ピジン・イングリッシュ)で、英語・フランス語も公用語。
主要産業は農業と観光業だが、多くの島では通貨を介さない自給自足を中心とした暮らしが残っている。温暖多雨な熱帯・亜熱帯気候下、農業はココヤシ、カカオ、トウモロコシ、イモ類の栽培が盛ん。輸出品は、コプラ(ココヤシの実を乾燥したもの)やココナツオイルが上位を占めている。観光はダイビング、フィッシング、カヤックなどのマリンレジャーのほか、「世界で最も火口に近づける火山」として有名なヤスール山(タンナ島)も人気が高い。また近年、首都ポートビラはタックス・ヘイブン(租税回避地)として、海外からの投資を促している。
1606年、ポルトガル人がサント島に到着し、ヨーロッパに紹介。1774年には英探検家クックが来航し、ニューヘブリディーズ諸島と名付けた。その後、植民地化を図るイギリスとフランスが領有権を巡り争ったが、1906年に合意。以後は、英仏の共同統治国として、二重支配を受けることになった。特異な統治形態は、多様な文化を持つ多くの島民を分断し、親英派と親仏派の対立を生み出した。80年にバヌアツ共和国として独立を果たしたが、この時、親仏派が独立反対運動(サント島の反乱)を起こしている。
環太平洋造山帯の上にあり、地震や火山の被害が多い。またサイクロンの通り道にも当たり、2015年3月には超大型サイクロン「パム」の直撃を受けた。首都ポートビラを始め全土が壊滅的な被害を受け、南部のタンナ島は9割以上の家屋が倒壊したと伝えられる。世界気象機関(WMO)は「パム」を最大風速約70メートル、最大規模の「カテゴリー5」と発表している。英・環境保護団体Friends of the Earthが発表した「地球幸福度指数」(06年)で、バヌアツは世界1位(対象178カ国)に選ばれている。