狂言の曲名。座頭狂言。勾当(こうとう)(シテ)と菊都(きくいち)(菊市とも)の2人の盲人が上京する途中、勾当が『平家』を語って聞かせ、しばらく行くと川に差しかかる。渡り瀬を知るため礫(つぶて)を打つと、最初は「ドンブリ」と沈み、場所をかえると「カッチリ」と底に当たるので、勾当が菊都に背負われて渡ろうとすると、通りがかりの者がかわりにその背に乗り渡ってしまう。勾当に呼び戻された菊都は不審に思いながらも勾当を背負ってまた渡り始めるが、深みにはまってずぶぬれになる。寒いので菊都に持たせた酒をつがせるが、これも通行人が受けて飲み、そのうえ2人にいたずらをするので、盲人たちは互いのしわざと思い、けんかを始める。大蔵流では菊都が勾当を倒して入り、和泉(いずみ)流では目明きの存在に気づくが、菊市が勾当を目明きと間違え竹杖(たけづえ)で追い込む。この曲の趣向は十返舎一九(じっぺんしゃいっく)『東海道中膝栗毛(ひざくりげ)』塩井川の場に取り入れられている。
[林 和利]
…東北地方の奥浄瑠璃や,北陸地方の盲僧の語りに残されたものには,大話もの,擬合戦もの,言語遊戯もの,数かぞえもの,祝いものなどがあり,いずれも滑稽諧謔(かいぎやく)を旨とするほか,〈そーれ物語かたり申そう〉などの文句で語り出すところに特色があり,早物語の系譜を示している。なお,狂言の《丼礑(どぶかつちり)》や《清水(きよみず)座頭》には,平曲の間に語られた早物語の具体的な姿がパロディとして見られる。【山路 興造】。…
※「丼礑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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