代替財・補完財(読み)だいたいざいほかんざい(その他表記)competitive goods, complementary goods

日本大百科全書(ニッポニカ) 「代替財・補完財」の意味・わかりやすい解説

代替財・補完財
だいたいざいほかんざい
competitive goods, complementary goods

コーヒーと紅茶、ビールとウイスキーなどのように、同じ用途に用いられる財の関係を「代替財」または「競争財」という。これに対して、コーヒーと砂糖、カメラとフィルムなどのように、二財を結合して使用する財の関係を「補完財」という。

 われわれはこのような財の分類を感覚的、経験的に行っているが、J・R・ヒックスは『価値資本』(1939)において、次のように厳密に定義した。いま二財X、Yがあるとき、Y財の価格変化がX財の需要に与えるトータルな効果は、所得効果と代替効果の二つに分けることができる。ここで所得効果とは、名目所得が一定のもとで、財の相対価格がどれだけ実質所得を変化させるかを意味する。代替効果とは、実質所得(効用水準)が一定のもとで、財の相対価格の変化が需要に及ぼす効果である。いま代替効果の符号が正、すなわち実質所得が一定のもとで、Y財の価格の上昇がX財の需要を増加させたならば、X財とY財は代替財である。逆に代替効果の符号が負、すなわち実質所得が一定のもとで、Y財の価格の上昇がX財の需要を減少させたならば、X財とY財は補完財となる。Y財の価格の変化がX財の需要にまったく影響を及ぼさないときには、X財とY財は独立財とよばれる。この定義に従えば、すべての財が互いに補完財になることはありえず、また二財のみの経済を考えれば、両財はかならず代替財となる。

[畑中康一]

『J・R・ヒックス著、安井琢磨・熊谷尚夫訳『価値と資本』全二巻(1965・岩波書店)』

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