仮の町(読み)かりのまち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「仮の町」の意味・わかりやすい解説

仮の町
かりのまち

東京電力福島第一原子力発電所事故により避難を余儀なくされた現場周辺の4町(福島県浪江(なみえ)、双葉(ふたば)、大熊(おおくま)、富岡(とみおか))の住民が、いわき市など周辺自治体に一時的に集団で移り住んでつくるコミュニティのこと。町外コミュニティともいう。福島県は、いわき、郡山(こおりやま)、会津若松(あいづわかまつ)の3市で、仮の町となる災害公営住宅(復興住宅)計500戸を先行的に建設する。復興庁は、2013年度(平成25)予算に仮の町整備のための交付金「長期避難者生活拠点形成交付金」を新設し、避難区域が設定されている自治体、避難者を受け入れている自治体が仮の町を整備するために503億円を計上している。

 当初、国は除染作業を集中的に行うことで、避難住民が早期に帰宅できると説明してきたが、除染作業には長期間を要することが判明した。とくに、浪江、双葉、大熊、富岡の4町は放射能レベルの高い帰宅困難地域であり、5年程度は帰宅できない見通しである。長期にわたって帰宅できないと知った町民は新たな生活基盤を求めて県内外各地へと分散しつつあり、町そのものが消滅しかねない。そのため行政機能とともに希望する町民が集住する仮の町を設置する構想が浮上した。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例