地震,豪雨,火山活動などの異常な自然現象,あるいは過失,事故,戦争などの人為的原因による災害により,本来の機能が破壊された場所,あるいは危険が予想される場所から,人身や財産を安全と考えられる場所へ移動させること。
避難には避難路と避難場所が必要である。建築物内部からの避難路には,廊下,階段,出入口,敷地周囲の道路または空地まで逃れるための敷地内通路がある。これらで対応できないときのために,壁面の非常用進入口などの救助施設や避難ばしごなどの避難器具が設置される。非常口灯などの誘導灯や排煙設備は避難を助けるために,火災報知設備などの警報設備は早期避難ができるように設置される。大局的にみた多数の人の動きを群集流動というが,歩行速度(m/秒)と,群集密度(人/m2)の平常時における関係はいくつか知られている。これらの関係は,設計段階で危険をチェックするための避難計算のもとになる。ただし非常時には,平常時には考えられない判断や行動をとることがあり,そのためにパニックを引き起こすことがある。パニック防止対策は避難時の重要課題である。1923年の関東大震災による東京市内の死者は約6万人(行方不明を除く)であるが,火災が原因の焼死者,水死者の合計は9割を超える。適切な避難が行われていれば,かくも多数の人命が失われることはなかったであろうという反省が,その後の避難計画,避難施設整備,避難訓練に反映されている。
災害対策基本法は,大規模災害に対処する防災基本計画の作成を義務づけているが,この中に,避難の指示,警告,伝達,誘導,および収容,輸送のための組織,方法等に関する計画が含まれる。たとえば,東京都地域防災計画では,大震火災時の広域的な避難手順について,(1)行政機関は被災情報を収集し,避難必要地域を判断し,避難の必要を勧告あるいは指示として地域の人々に伝達する,(2)避難勧告・指示を受けた避難者は,一時集合場所で集団を形成する,(3)避難者集団は,行政機関職員や防災市民組織のリーダー等の誘導によって指定避難場所へ避難する,としている。1984年時点で134ヵ所の避難場所が指定されているが,3km以上の遠距離避難を必要とする居住人口が71万人もあること,避難路が火災等により通行不能の場合の誘導方法も研究段階にあるなどの問題は残されている。いっぽう避難者には,自家用車による避難や大きな荷物を携行した避難の自粛が求められる。発生が予想される〈東海地震〉対策では,地震予知情報にもとづき警戒宣言が発せられたとき,津波危険予想地域,がけ地崩壊危険地域等の,地震発生時に直ちに住民の生命に危険が生ずる地域における事前避難を実施することとしている。また地震対策緊急整備事業計画をたてて,避難地,避難路などの整備促進を図っている。しかしながら防災の基本は,建物等構造物の不燃堅牢化,治山治水,緩衝帯整備等によって災害を抑制して避難の必要を減らすことである。
→災害
執筆者:山田 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
字通「避」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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