伊吹艾(読み)イブキモグサ

精選版 日本国語大辞典 「伊吹艾」の意味・読み・例文・類語

いぶき‐もぐさ【伊吹艾】

  1. 〘 名詞 〙 滋賀・岐阜県境にある伊吹山でとれるヨモギでつくった質の良いもぐさ。伊吹の赤団子
    1. [初出の実例]「伊吹艾。〈略〉その地を平らぎて、薬草三十余種を栽たりといふ。今伊吹山の艾は、その遺種なるべしと云は、さもあるべし」(出典:随筆・提醒紀談(1850)五)

いぶき‐よもぎ【伊吹艾】

  1. 〘 名詞 〙 植物やまよもぎ(山艾)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊吹艾」の意味・わかりやすい解説

伊吹艾
いぶきもぐさ

滋賀・岐阜県境にある伊吹山でとれるヨモギでつくった質のよいもぐさ。伊吹の赤団子(あかだんご)ともいう。伊吹山は平安時代から薬草の産地として知られ、同地産のもぐさは「伊吹のさしも草」として歌枕(うたまくら)にも使われている。しかし諸国に名産品として知られるようになったのは、江戸時代に入ってからで、中山道柏原(なかせんどうかしわばら)宿(滋賀県米原(まいばら)市)の艾屋亀屋の7代目の十兵衛が江戸・吉原で「江州(ごうしゅう)柏原伊吹山のふもと亀屋佐京の切りもぐさ」の俗謡遊女に教え宣伝したことで、浄瑠璃(じょうるり)などにも取り上げられるようになったという。盛時には柏原宿の艾屋は十数軒を数え、このほか大津(大津市)、北国脇(ほっこくわき)往還春照(すいじょう)宿(米原市)、東海道沿いの梅木(うめのき)(栗東(りっとう)市)にも伊吹艾の店があったという。

[渡邊守順]

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