改訂新版 世界大百科事典 「伝染性単核細胞症」の意味・わかりやすい解説
伝染性単核細胞症 (でんせんせいたんかくさいぼうしょう)
infectious mononucleosis
IMと略記し,伝染性単核球増多症ともいう。腺熱と似た症状を呈するが,リケッチアによる腺熱とは異なり,病原体はEBウイルスが最も重要と考えられている。多くは経口感染により伝播し,潜伏期は4~7週,若年男女に多く,発熱,リンパ節腫張(頸部に最も著しい),咽頭痛を3主徴とする。しばしば全身の皮疹を伴い,軽度の脾腫がみられ,赤血球系,血小板系には通常変化がないが白血球数はおおむね増加し,20000/mlまたはそれ以上に達し,白血球分画では50%ないしそれ以上をリンパ球またはリンパ球様細胞が占める。また血清反応として,ポール=ブルネル試験の陽性化がみられるが,日本人ではこの試験が陰性にとどまる例も多い。予後は良好で,発症後2~3週間で自覚的に無症状となるが,1ヵ月前後で肝機能障害がかなり高率に発症するので,血液学的検査が改善しても経過観察を怠ってはならない。治療としては,安静臥床以外特殊なものは不要である。
執筆者:山口 潜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報