日本大百科全書(ニッポニカ) 「佐世保炭田」の意味・わかりやすい解説
佐世保炭田
させぼたんでん
長崎県佐世保市と北松浦郡に分布する炭鉱地帯。北松炭田(ほくしょうたんでん)ともいう。狸掘(たぬきぼ)りによる採炭は江戸時代から行われ、1858年(安政5)から開坑が増え、明治・大正時代には急激に増加した。最盛期の1958年(昭和33)には、稼行炭鉱数98、年間出炭量236万トン、従業員1万8156人を数えた。炭質は強粘結を主としたが、炭層がきわめて薄く、中小の零細な経営が94鉱で、大手筋炭鉱は日本製鉄系の鹿町(しかまち)鉱・神田(かんだ)鉱、住友系の潜竜(せんりゅう)鉱、麻生(あそう)系の岳下(たけした)鉱の4鉱にすぎなかった。1960年以後、国のエネルギー政策の転換などにより、石炭不況が深刻となり、現在稼行炭鉱は1鉱もない。
[石井泰義]