佐野の岡
さののおか
「万葉集」巻三に載る山部赤人の歌に、「秋風の寒き朝明を佐農の岡越ゆらむ君に衣貸さましを」とある。この佐農は、同じく「万葉集」に出る狭野(佐野)と同一視されたらしく、後世の歌学書「五代集歌枕」「八雲御抄」は「万葉集」を証歌として「さのゝ岳」を紀伊の名所とする。「続風土記」も、佐野村の南西五町ほどにある岡で、熊野街道大辺路より小高い所にあり、村人は岡とのみいうと記している。しかしヌとノの音の相違もあり、必ずしも佐野の地の岡とは確定しがたい。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
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