日本大百科全書(ニッポニカ) 「偏光ガラス」の意味・わかりやすい解説
偏光ガラス
へんこうがらす
glass polarizer
特定の方向に振動する状態の光(偏光)をつくりだす光学ガラス。電球や蛍光灯などから発せられるさまざまな方向へ振動する状態の光(ランダム偏光)を入射し、一方向のみ振動する状態の光(直線偏光)を得ることができる偏光ガラスが実用化されている。これは、ホウケイ酸塩系ガラス中に、楕円(だえん)形状を有した銀微粒子を一方向へ配向分散させたガラスで、これに電球や蛍光灯を照射すると、銀微粒子の長手方向に対して直行する方向に振動する光のみ透過し、それ以外の方向に振動する光はガラス中に吸収され透過できない。この特性を利用することで、直線偏光を得ることができる。また、分相ガラス(熱処理によって均一なガラスが二つ以上の相に相分離したガラス)や有機高分子類似の鎖状構造を有するガラスを、延伸や圧縮などの操作により一方向へ変形させ、構造に配向性を付与することによって、偏光特性を示すガラスも開発されている。プラスチックを延伸することで同様の特性を得ることができるが、耐熱性が求められる用途にはガラスが用いられる。特定の偏光面の光のみを透過させる偏光板として利用され、光通信用の光アイソレーター素子や光記録・再生用の光ピックアップ素子などに応用されている。
[伊藤節郎]