改訂新版 世界大百科事典 「児雷也豪傑譚話」の意味・わかりやすい解説
児雷也豪傑譚話 (じらいやごうけつものがたり)
歌舞伎狂言。時代物。4幕。河竹黙阿弥作。通称《児雷也》。1852年(嘉永5)7月江戸河原崎座初演。配役は児雷也実は尾形周馬を8世市川団十郎,持丸富貴太郎・仙素道人・夜叉五郎を2世市川九蔵(のちの6世団蔵),大蛇丸(おろちまる)・高砂勇美之助を3世嵐璃寛,越路・傾城あやめ・照田を3世岩井粂三郎,熊手屋慾四郎・八鎌鹿六を浅尾奥山,畑作娘みゆきを市川団之助,月影深雪之助を市川猿蔵。草双紙合巻《児雷也豪傑譚》を脚色した作。藤橋のだんまり,三すくみの見得,鹿六内の場,鷲に乗って逃れる幕切れなどが著名で,幕末歌舞伎に特徴的な錦絵風の古怪な味わい,草双紙趣味の濃厚な,変化にとむ展開が歓迎された。上演頻度としては少ないが,それだけに貴重である。なお,55年(安政2)5月江戸河原崎座で,《児雷也後編譚話(ごにちものがたり)》(河竹黙阿弥作)として,後編が脚色上演された。
執筆者:小池 章太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報