全前脳胞症

内科学 第10版 「全前脳胞症」の解説

全前脳胞症(先天奇形)

(5)全前脳胞症(holoprosencephaly)(図15-13-6)
概念
 胎児期初期に脳原器である前脳が左右に分離して大脳半球と間脳を形成する機転が何らかの機序で障害され,左右の大脳あるいは間脳が病的な連続性を示す脳形成異常である.程度によって無脳葉型(全体が不分離),半脳葉型(背側部分は分離),脳葉型(ほぼ分離しているが前頭部一部のみ連続)に分類される.無脳葉型では,脳の左右分離不全にあわせて眼間狭小,単眼,鼻梁低形成,唇裂,口蓋裂などの顔面正中部の低形成を合併することが多い.
病因
 原因として染色体異常(13トリソミーなど),多発奇形症候群,先天代謝異常(Smith-Lemli-Opitz症候群など),遺伝子異常(SHH,ZIC2など),外因性などがあげられる.
臨床症状
 形態異常の重症度に応じて,軽度から重度の精神遅滞を呈する.また,高頻度てんかん脳性麻痺を伴う.内分泌異常として尿崩症や電解質異常,下垂体機能不全を呈することがあり注意を要する.
診断
 頭部MRIの冠状断面で,左右の脳半球の病的な連続性を確認することで診断が可能である.無脳葉型では,左右の側脳室が融合した単一脳室を呈し,しばしば背側に囊胞形成(dorsal sac)を認める.重症の無脳葉型では,大脳半球だけでなく大脳基底核視床視床下部も融合している所見を認める.また高頻度に水頭症を合併する.[岡 明]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報