デジタル大辞泉
「水頭症」の意味・読み・例文・類語
すいとう‐しょう〔‐シヤウ〕【水頭症】
頭蓋腔内で脳脊髄液が多量に産生されたり流通を妨げられたり吸収が悪かったりして、病的にたまって脳室や蜘蛛膜下腔が拡大した状態。脳水腫。
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すいとう‐しょう‥シャウ【水頭症】
- 〘 名詞 〙 頭蓋の脳脊髄液腔に何らかの原因で脳脊髄液が病的にたまり、腔が異常に拡大した状態。脳水腫。
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水頭症
すいとうしょう
Hydrocephalus
(子どもの病気)
頭蓋内に脳脊髄液が過量にたまることにより、脳そのものが圧迫を受けたり頭蓋内の圧が高くなったりすることを水頭症といいます。
脳脊髄液が過量にたまる原因として、①脳脊髄液が過量につくられる、または吸収が悪い、②脳脊髄液の流れが損なわれる、があります。①は脳そのものや脳を取り巻く血管の奇形などによることが多く、②は脳腫瘍や感染(髄膜炎)、脳出血などによる炎症が引き起こします。
乳児期に最も多い症状は頭囲(頭のサイズ)の異常な増加です。母子手帳の後ろに書いてある頭囲成長曲線の正常範囲を大きく外れていることで見つかることがあります。頭蓋骨の継ぎ目が開いたり、大泉門(前頭部にある頭蓋骨のすきま)の皮膚がパンとはって外に張り出したりすることもあります。不機嫌が続く、うとうとと眠ってばかりいる、両方の黒目が急に下方にくるりと引っ張られる(落陽現象という)などの症状もあります。幼児期になると、頭痛、嘔吐が続く、けいれん発作が現れる、歩行がおかしいなどで見つかることもあります。
体を診察し、頭囲成長曲線を作ってみて、水頭症が強く疑われるかどうかが検討されます。頭部CT、MRI検査などで診断されます。
水頭症を起こしている原因によって治療法は異なりますが、多くは外科的治療が必要になります。脳腫瘍による場合は、腫瘍の摘出を含めて腫瘍そのものに対する治療を行います。その他の原因による場合は、水頭症の程度に応じて、脳内と腹部などをつなぐカテーテル(管)を皮下に通し、たまった過量な髄液を腹部に流して脳への圧迫を除くという、シャント術(短絡手術)が多く行われます。
シャント術は技術的には難しくありません。カテーテルそのものは体に悪い影響はなく、半永久的に使うことができます。ただし、正常に機能しているかどうか定期的なチェックが必要です。
また最近では、神経内視鏡という機器を用いて、脳の深部に小さな穴を開けることによりシャントを作る手術(第三脳室底開窓術)も行われるようになりました。カテーテルを入れずにすむ治療法として、期待されています。
小児科、小児神経科の外来を受診して、水頭症が強く疑われるかどうか診察を受けます。必要に応じて脳神経外科を受診し、原因や治療方針について十分に検討してもらいます。体や心の発達に影響する病気ですから、発達についての適切な援助が受けられる医療機関を選んでください。
髄液(コラム)、脳腫瘍
山田 謙一
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
すいとうしょう【水頭症 Hydrocephalus】
[どんな病気か]
髄液(ずいえき)の生産量と吸収量とは、バランスがとれています(コラム「髄液の産生と吸収のバランス」)。
髄液の流れと吸収が、なんらかの病気で障害されると、髄液が脳室(のうしつ)や脳のくも膜下腔(まくかくう)に異常に貯留します。この状態を水頭症といいます。
[原因]
脳の腫瘍(しゅよう)やがん、細菌・ウイルス・寄生虫などの感染でおこる髄膜炎(ずいまくえん)、脳の外傷、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)の破裂や高血圧が原因でおこる脳内出血(のうないしゅっけつ)、未熟児におこりやすい脳室内出血、脳の形態異常(先天性の病気)などで水頭症がおこってきます。
水頭症の原因となる脳の形態異常には、中脳水道狭窄症(ちゅうのうすいどうきょうさくしょう)、脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)に合併したキアリーⅡ型奇形(がたきけい)、髄液の静脈洞(じょうみゃくどう)への流入が障害される交通性水頭症(こうつうせいすいとうしょう)、ダンディー・ウォーカー症候群(しょうこうぐん)、脳瘤(のうりゅう)などがあります。
[症状]
年齢によって、症状が異なります。
●赤ちゃん(乳児)の症状
頭が異常に大きくなり、頭の中の圧力が上がってきます(頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん))。頭蓋内圧の亢進が進むと、頭の皮膚の静脈が怒張(どちょう)してふくらみ、くり返し眼球(がんきゅう)が下転して、黒目(くろめ)の下半分が下まぶたにかかり、白目(しろめ)が目立つ落日現象(らくじつげんしょう)がおこります。
赤ちゃんを座らせてミルクを飲ませたときに大泉門(だいせんもん)を触れると、そのへこみがなく、ときには盛り上がって緊満(きんまん)している場合もあります。また、四肢(しし)(両手足)を突っ張る傾向もあります。
頭蓋内圧亢進が急速に進むと、嘔吐(おうと)やけいれん、さらには不機嫌、嗜眠傾向(しみんけいこう)(うとうと眠る状態)が現われ、頭痛のためか、赤ちゃんが甲高(かんだか)い声でくり返し発作的(ほっさてき)に泣くこともあります。
頭蓋内圧の亢進がゆっくりとおこった場合は、前述のような症状はあまり目立ちませんが、脳の発達が障害されるために、月齢、年齢にふさわしい発育がみられません。
●幼児以上の子どもの症状
成人だけでなく、子どもの場合も頭蓋内圧亢進がおこり、そのため頭痛、嘔吐が頻繁(ひんぱん)におこるようになります。
頭痛は明け方におこりやすく、嘔吐は吐(は)き気(け)をともなわないで急におこります。また、注意力、集中力の低下を招き、健常な日常生活が損なわれます。
頭蓋内圧亢進がしだいに悪化すると傾眠(けいみん)傾向(刺激を与えないと眠ってしまう)となり、ついには、意識障害がおこります。さらに、歩行障害など手足の運動障害、眼球運動障害もおこってきます。
●正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)の症状
正常圧水頭症は高齢者におこります。認知症(にんちしょう)などの精神機能障害、歩行障害、尿失禁(にょうしっきん)がおこりますが、これら3つの症状がそろわないケースもまれではありません。
正常圧水頭症は、原因となった病気を明らかにすることはできないのがふつうです(特発性正常圧水頭症(とくはつせいせいじょうあつすいとうしょう))。
[検査と診断]
頭部のCTやMRIで診断します。これらの検査で多くの場合、原因となった病気がわかりますが、脳の形態異常に合併した水頭症では、原因を明らかにできないことも少なくありません。
けいれんを合併する子どもの水頭症は、小児神経学の専門家の診察と脳波検査が必要です。
[治療]
腫瘍(しゅよう)や出血、血腫(けっしゅ)などが脳室内の髄液の流れを障害していれば、外科的治療で除去します。
病巣(びょうそう)を除去できない場合は、貯留する髄液を腹腔(ふくくう)や胸膜腔(きょうまくくう)に導出する短絡術(たんらくじゅつ)(シャント術)を行ないます。シャント術ではシリコンのチューブ(短絡管)を皮下に埋め込み、脳室と腹腔や胸膜腔、脊髄のくも膜下腔と腹腔や胸膜腔とを短絡(つなぐこと)します。
細菌感染などによる髄膜炎(ずいまくえん)がおこっているときは、脳室などから髄液を体外に流し出し、感染が治った時点でシャント術を行ないます。
中脳水道が閉塞(へいそく)して水頭症となっている場合や、第四脳室に腫瘍があって脳室内の髄液の流れが障害されている場合には、脳室鏡(のうしつきょう)を用いて第三脳室と脳底のくも膜下腔に交通をつける第三脳室開窓術が行なわれます。この場合は、短絡管の設置は必要ありません。
[日常生活の注意]
水頭症の治療を受けた人は、定期的な脳神経外科医の診察を受けることが必要です。病気の管理が良好であれば、通常の生活を楽しむことが可能です。
出典 小学館家庭医学館について 情報
水頭症
すいとうしょう
hydrocephalus
脳脊髄(せきずい)液が脳室腔(くう)内やくも膜下腔に異常に多く貯留した状態をいう。乳幼児水頭症の多くは、先天性で、出生1000人のうち、0.2~0.5人にみられる。先天性水頭症の多くは、その成因が不明である。髄液はおもに脳室内脈絡叢(そう)でつくられ、側脳室、第三脳室、第四脳室を経て脳表や脊髄のくも膜下腔を還流して吸収されるが、この髄液循環に異常がおこると水頭症を招く。すなわち、髄液の産生過剰、吸収障害、通過障害によって髄液の循環に異常を生じ、髄液は増加し、頭蓋(とうがい)内圧を亢進(こうしん)させて脳障害をおこす。分類法にも種々あり、発生機序から過分泌性と非吸収性水頭症、脳室系とくも膜下腔との通過障害の有無によって交通性(非閉鎖性)と非交通性(閉鎖性)水頭症などに分けられる。また先天性と後天性にも分ける。後天性水頭症では髄膜炎、血管炎、外傷性頭蓋内出血および脳腫瘍(しゅよう)などが原因となる。
[加川瑞夫]
乳幼児では頭囲の拡大、泉門の膨隆、頭蓋骨の菲薄(ひはく)化、知能発育遅延、うっ血乳頭、落陽現象(上眼瞼(がんけん)は下降せず、眼球だけが病的に長期間下方回転し、日が沈むようにみえる現象)、外眼筋麻痺(まひ)、高音涕泣(ていきゅう)、不機嫌、栄養不良、意識障害などの脳圧亢進症状がみられる。後天性水頭症では頭痛、嘔吐(おうと)、けいれん発作、視力障害、複視、めまい、精神症状などの頭蓋内圧亢進症状が主体となる。
[加川瑞夫]
病歴、神経学的検査、神経放射線学的検査によるが、とくにコンピュータ断層撮影(CT)、髄液検査は有用であり、髄液圧の亢進、髄液通過障害の有無および脳室の拡大などがわかる。CTにより脳室の拡大から間接的に閉塞(へいそく)部位を診断できる。
診断、治療上とくに問題となるのは、重症の単純水頭症が水無脳症、重症の孔脳症、重症の両側性硬膜下血腫、全前脳胞症などと類似のCT像を呈することである。単純水頭症では、重症で、外套(がいとう)が紙状に薄くなっていても治療対称になるのに対し、上記の類似疾患は通常治療対称にならない。両者の鑑別にMRI(磁気共鳴映像法)、脳血管撮影を必要とすることがある。
[加川瑞夫]
脳腫瘍、くも膜下嚢胞(のうほう)などによるものでは、原因除去が検討される。そのほか、一時的に髄液を血管腔へ導く脳室‐心耳短絡術、腹腔に導く脳室‐腹腔短絡術などが行われる。また、内視鏡を用いた短絡術、中脳水道閉塞に対するステント留置などが行われる。
[加川瑞夫]
短絡術が適切であれば機能的予後、生命予後はともによい。水頭症の予後は、脳の厚みよりも形態異常を合併しているかどうかにかかっている。なお、髄液圧は正常範囲なのに脳室系が拡大し、認知症、歩行障害、尿失禁を呈する正常圧水頭症は高齢者や頭蓋内出血後にみられる病態であるが、短絡術により症状の改善が期待できる。
[加川瑞夫]
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水頭症 (すいとうしょう)
hydrocephalus
頭蓋内に髄液が多量にたまった状態。髄液は脳の内部の空間(脳室)でつくられ,循環して脳の外側で吸収される。この産生・吸収のバランスや循環に異常が起こって頭蓋内の圧が上がり(頭蓋内圧亢進症),髄液がたまって頭蓋腔の拡大が起こると水頭症になる。多くは脳室が拡大し,外見的には脳が大きくなるが,脳の実質は萎縮し薄くなる。原因として脳の先天奇形のほか,胎児期・生後の中枢神経感染症(髄膜炎など),頭蓋内出血,腫瘍などがある。症状として外見上頭が大きい(顔面頭蓋に比べ脳頭蓋が大きい)ほか,精神発達遅滞,運動障害(多くは痙性麻痺),痙攣(けいれん)発作(てんかん)などが起こる。治療は髄液を他へ逃がすための短絡手術(腹腔や心房内などへ逃がすためのチューブを入れる)が行われる。脳室と脳外部との交通の有無によって交通性,非交通性の分類,また髄液のたまる部位によって内水頭症,外水頭症の分類がされる。
執筆者:小宮 和彦
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水頭症【すいとうしょう】
頭蓋内に髄液が過剰に貯留し,脳室やくも膜下腔が拡大した状態をいう。通常頭蓋内圧亢進が起こり,そのため嗜眠(しみん)傾向,知能の遅れや退化などが起こり,さらに進行すると呼吸困難や意識障害,痙攣(けいれん)などが起こる。頭蓋骨の柔らかい乳幼児期に起こった場合は,頭蓋骨が押し広げられて異常に大きくなる。原因は髄液の通過障害,過剰分泌,吸収障害。通過障害があるものを非交通性水頭症,それ以外を交通性水頭症と呼び,さらに先天性と後天性に区別することもある。先天性のものは,形態異常による以外は原因不明。後天性のものは,外傷や髄膜炎,脳腫瘍(しゅよう)などによる。治療は主に,貯留した髄液を特殊なチューブで腹腔や血液中に流し,そこで吸収させるシャント術を行う。
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水頭症
すいとうしょう
hydrocephalus
脳水腫ともいう。脳脊髄液が過剰に貯留して,脳室が拡大した状態をいう。通常,頭蓋内圧亢進を伴う。種々の分類があるが,交通性水頭症と非交通性水頭症に分けるのが,治療上最も有用である。前者は,髄膜炎,クモ膜下出血などにより脳脊髄液の吸収機転が阻害されて起る。後者は,第三脳室,中脳水道,第四脳室などが腫瘍その他によって閉塞され,脳室系とクモ膜下腔との交通が阻害されるために起る。新生児や乳児では頭囲が次第に拡大し,大泉門が膨隆する。一般に知能の発達が遅れる。年長児や成人では,早期から頭痛,嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状を呈する。治療には,脳脊髄液の流れを改善する手術 (→脳室腹腔吻合術 ) を行う。なお,正常圧水頭症と呼ばれるものは,脳室は拡大しているのに髄液圧は正常で,発病は徐々である。原因は不明のこともあり,クモ膜下出血後に生じることもある。
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水頭症
脳脊髄液(のうせきずいえき)の生産・循環・吸収障害によって頭蓋腔内に髄液が過剰に貯留し、脳室の異常拡大が生じる疾患。生まれつきの奇形を原因とする「先天性水頭症」と、生後に生じたくも膜下出血や頭部外傷などによって起こる「後天性水頭症」がある。症状には頭痛、嘔吐(おうと)、頭部肥大、歩行障害、認知症、尿失禁などがあり、けいれん発作を起こす場合もある。原因によって治療法は異なるが、多くは外科的治療が必要となる。
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