六訂版 家庭医学大全科「脳性麻痺」の解説
脳性麻痺
のうせいまひ
Cerebral palsy
(子どもの病気)
どんな病気か
胎児がおなかのなかにいる時から出生直後(4週まで)の間に起きた、脳の何らかの障害による「運動の異常」を指します。年齢とともに進行する麻痺や一時的な麻痺、あるいは単に発達が遅れているだけのものは脳性麻痺とは呼びません。間違えやすいものに「小児麻痺」がありますが、これはポリオウイルス感染によって発生する麻痺(
原因は何か
遺伝的要因や
症状の現れ方
多くは、出生後の定期的な乳幼児健康診断時に、運動発達の異常で発見されます。主な症状として、①運動発達の遅れ、②異常な運動と姿勢、③
検査と診断
母子手帳記録(妊娠中の様子、分娩の経過など)を参照し、症状がみられるようになるまでの精神と運動発達の状況について十分に把握します。体の診察、心理発達検査を基本として、必要に応じて頭部CT・MRI、脳脊髄液検査などが加わることがあります。これらすべての情報を総合して診断されます。
治療の方法
現在の医学では病気を完全に治す(まったく障害がない状態にする)ことはできません。
したがって治療は、障害があっても姿勢・運動、摂食、発語などをうまくコントロールしていけるように治療、訓練を受けることが中心になります。医師の診察で麻痺のタイプと程度および発達の程度を評価して、それに合った治療と訓練の目標を決めます。治療には、①薬物療法、②手術療法があり、①は筋肉の緊張を和らげる薬の内服、②は足の変形を治し、筋肉の緊張を和らげるための手術が行われます。
訓練には、③理学療法、④作業療法があります。③は主に移動する機能の向上と筋肉の緊張の緩和、④は手を使った日常動作を向上させるために行われます。①は小児科、②は整形外科、③④はリハビリテーション科で主に行います。
病気に気づいたらどうする
小児科、小児神経科の外来を受診し、本当に脳性麻痺が疑わしいかどうかを判断をしてもらいます。小児神経科のある医療機関での診断を受けることをすすめます。また診断後も、心と体の発達に関する適切な評価、日常生活のサポートを受けられる医療機関を選ぶことも大切です。
同じ疾患をもった患者ご家族の会が多く活動されており、具体的な情報を得る参考になることがあります。
関連項目
山田 謙一
脳性麻痺
のうせいまひ
Cerebral palsy
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな病気か
子どもがおなかにいるときから生後4週までに、何らかの原因で脳が損傷を受けると、その後、体や手足が自由に動かせなくなることがあります。これが脳性麻痺で、脳障害の後遺症といえます。運動の麻痺ですが、知的障害やてんかんを伴うことがあります。麻痺が非常に軽度で生活上の障害がない人から、重度で座ることができない人までいます。
原因は何か
脳障害の原因はさまざまで、次のようなものがあります。
①おなかにいるとき
遺伝子や染色体の異常、脳の形成異常(
②出産時とその前後
③生後1カ月まで
症状の現れ方
首がすわる(3~4カ月ごろ)、おすわりができる(7カ月ごろ)、歩き始める(1歳ごろ)などの運動発達が遅れます。また、体や手足が硬い、手足の動きが少ない、体がそりやすいなどの異常がみられます。これらの症状は、およそ2歳ごろまでに現れます。一般的に重度なほど早期に症状が出ます。
成長するにつれて、手足の筋肉が短縮したり、関節がこわばったり、
検査と診断
脳の超音波、MRI、CT検査の結果などと、手足の筋肉の緊張や運動発達の遅れなどの症状から総合的に診断します。ごく軽度の脳性麻痺では、これらの検査で異常がみつからないことがありますが、その場合は症状で診断します。
麻痺のタイプには、
治療の方法
治療の目的は、子どものもつ運動能力を最大限に引き出し、得られた能力を生涯にわたり維持させることです。
①訓練
理学療法で筋肉の緊張を和らげたり、運動発達を促します。作業療法で手の機能の向上を目指します。
②装具
歩きやすくする、手を使いやすくするなどの機能的な装具と、筋肉の短縮や関節が硬くなるのを予防する夜間につける装具などがあります。
③筋肉の緊張を和らげる治療
・選択的
・ボツリヌストキシン筋肉注射:特定の筋肉の緊張を和らげます。
④整形外科的手術
短縮した筋肉を延長したり、大腿骨・下腿骨のねじれ、足部の変形を治します。また、重度な子どもの
病気に気づいたらどうする
神経を専門にする小児科、小児を専門にする整形外科などに受診してください。わからない場合は、肢体不自由施設、小児病院、こども病院などに問い合わせてください。
則竹 耕治
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報