化学辞典 第2版 「八モリブデン酸」の解説
八モリブデン酸(塩)
ハチモリブデンサンエン
octamolybdic acid(octamolybdate)
普通は,MⅠ4[Mo8O26]をさす.ただし,ほかにいくつかMo原子を8個含むイソポリ酸がある.【Ⅰ】八モリブデン酸(4-)(塩):MⅠ4[Mo8O26].IUPAC体系名はヘキサコサオキシド八モリブデン酸(4-)(塩).通称をメタモリブデン酸(塩)という.また,組成式がM2O・4MoO3・nH2Oであることから,四モリブデン酸(塩)ともいわれる.アルカリ金属塩およびアンモニウム塩は,それぞれのパラモリブデン酸塩とMoO3・2H2Oとの水溶液中の反応で得られる.八モリブデン酸塩には,少なくとも6種類の結晶構造があり,この場合は,β型のポリ酸イオンである.[(C4H9)4N]4[Mo8O26]などではα型が得られている.β型のポリ酸イオンは,8個の正八面体型MoO6が,稜共有で結合した形である.α型は,6個の正八面体型MoO6が稜共有で六角形になり,その上下に四面体型のMoO4が1個ずつ三頂点のO原子の共有で結合している.アルカリ金属塩は無色の結晶.水に可溶.固体は室温の空気中で安定であるが,水和水の一部を風解で失うものもある.【Ⅱ】 [Mo8O28]6- の2個のO原子が,それぞれ両側に同型イオンとO原子共有で結合して,鎖状になった型の化合物(NH4)6n[(Mo8O27)n](単斜晶系)も存在する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報