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結晶構造 けっしょうこうぞうstructure of crystal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

結晶構造
けっしょうこうぞう
structure of crystal

原子あるいは分子が規則的に配列した固体結晶といい,原子または分子の三次元空間における配列の仕方を結晶構造という。結晶構造は,三次元空間における3つの座標軸に沿った単位長さから成る構造の平行移動の組合せで表すことができる。各座標軸間の角度が 90度かそうでないか,各軸に沿う単位長さが等しいか等しくないかによって,立方晶系正方晶系六方晶系など7つに分類できる。

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百科事典マイペディアの解説

結晶構造【けっしょうこうぞう】

結晶の内部における原子の規則正しい配列様式。配列の単位は結晶格子の格子点に位置する原子,原子団,分子,イオンなどで,それらが各種の化学結合により結合(たとえば塩類の結晶におけるイオン間のイオン結合)し,その結合の種類により結晶の物理的性質が支配される。
→関連項目オングストローム結晶学結晶形

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世界大百科事典 第2版の解説

けっしょうこうぞう【結晶構造 crystal structure】

結晶中の原子の幾何学的な配列の様式を結晶構造という。分子も原子の集りによって幾何学的に構成され,分子構造をもつから,分子性結晶では,ある構造をもった分子が集まって,結晶構造という別の構造を幾何学的に構成していることになる。結晶の基本的な性質は,その結晶構造に依存している。したがって,結晶構造についての詳細な知識は結晶の物理的性質の研究に重要であるばかりでなく,必要とする物性をもった結晶を合成する指針ともなりうる。

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大辞林 第三版の解説

けっしょうこうぞう【結晶構造】

結晶を構成している原子・分子・イオンなどの空間的配列状態。結晶形の対称性、 X 線の回折像などから結晶構造を決める。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

結晶構造
けっしょうこうぞう
crystal structure

結晶格子での原子の配列。結晶構造の決定には、単結晶X線回折法のほか、中性子線回折法、電子線回折法、粉末X線回折法なども利用され、核磁気共鳴吸収法、赤外・ラマン分光法、メスバウアー分光法、核四重極共鳴吸収法なども補助的に利用されることがある。結晶構造は、その結晶の属する晶系、晶族(点群)、あるいは単位胞の空間群、格子定数ならびに単位胞内の原子座標によって基本的に示される。現実の結晶では、各原子は熱振動しているので、その程度を示す温度因子も原子座標とともに示されることが多い。
 測定および解析技術の進歩によって、結晶構造解析に関する報告例は爆発的に増加しつつあるが、それでも、現在知られている結晶性物質の種類の数に比べれば、微々たるものである。複雑な有機化合物、錯体、タンパク質などの結晶構造を系統的に分類するには、まだ十分な数の報告例が蓄積されているとはいえない状況にある。[岩本振武]

無機化合物の結晶構造の分類

単位胞が比較的小さく、組成も複雑ではない無機化合物については、多くの典型的結晶構造が知られており、その典型例となる化合物あるいは鉱物の名を冠した構造の型が分類されている。[岩本振武]
組成AX(Aは陽性元素、Xは陰性元素)となる二元化合物の構造
塩化ナトリウム(岩塩)型、塩化セシウム型、閃(せん)亜鉛鉱型、ウルツ鉱(繊維亜鉛鉱)型、ヒ化ニッケル型、酸化パラジウム型などがある。それらにおける構造の差異は、イオン半径比や結合に及ぼす共有性の効果の程度の差によって生ずると考えられる。
 塩化ナトリウム型(図Aの(1))と塩化セシウム型(図Aの(2))は、同じアルカリ金属に属する陽イオンの塩化物ではあるが、セシウムイオンのイオン半径がナトリウムイオンより大きいため、同じ構造にはならない。塩化ナトリウム型では、塩化物イオンのつくる面心立方格子の中に生ずる八面体型6配位の位置にナトリウムイオンが収まるが、セシウムイオンは大きすぎて、この位置には収まらない。セシウムイオンでは配位数が8に増大し、塩化物イオンのつくる単純立方格子の中に生ずる立方体型8配位の位置に収まる。
 閃亜鉛鉱(図Aの(3))もウルツ鉱(図Aの(4))もともに硫化亜鉛ZnSを主成分とする鉱物であるが、前者では硫化物イオンが面心立方格子、後者では六方格子をつくり、それぞれの四面体型4配位の位置に亜鉛イオンが収まる。亜鉛イオンと硫化物イオンとの半径比は、ハロゲン化アルカリに比べれば小さくなっている。硫化亜鉛の場合、閃亜鉛鉱型が室温安定形で、ウルツ鉱型が高温安定形である。また、陽イオンによる陰イオンの分極の程度も大きくなり、共有結合性の寄与も大きいと考えられている。
 ヒ化ニッケル型(図Aの(5))では、陰性のヒ素原子が六方格子をつくり、その八面体型6配位の位置に陽性原子のニッケルが収まる。ニッケル原子間の距離2.51Åは、金属結晶での距離の2倍であるが、結晶としての性質は共有結合性ないし金属結合性を帯びている。
 酸化パラジウム型(PdO)では、結合の方向性が著しくなり、共有(配位)結合の寄与も大きい。正方晶系の単位胞中でパラジウムイオンは4個の酸化物イオンに正方平面体型4配位構造で囲まれるが、逆に、酸化物イオンは4個のパラジウムイオンによって正四面体型4配位構造で囲まれる。
 共有結合性の強い二元化合物では、ダイヤモンド型(図B)構造と類似した閃亜鉛鉱型構造のもののほか、黒鉛に似た層状構造を示すものがあり、窒化ホウ素BNがその例となる。[岩本振武]
AX2型化合物の構造
蛍石型(CaF2)、ルチル型(TiO2)、クリストバル石型(SiO2)、ヨウ化カドミウム型(CdI2)、塩化鉛()型(PbCl2)などがある。
 蛍石型(図Cの(1))では、カルシウムイオンが面心立方格子をつくり、そのすべての四面体型4配位位置にフッ化物イオンが位置する。逆に、カルシウムイオンは、フッ化物イオンのつくる単純立方構造の中心に収まることになる。ルチル型は42螺旋(らせん)軸をもつ正方晶系に属するが、チタンイオンは6個の酸化物イオンによって八面体型配位を受け、1個の酸化物イオンは3個のチタンイオンに配位している。クリストバル石型(図Cの(2))ではケイ素原子がダイヤモンド型構造の炭素原子と同じ位置を占め、各ケイ素原子を四面体的に結ぶ線上の中点に酸素原子が位置し、共有結合による三次元構造が形成される。
 ヨウ化カドミウム型構造(図Cの(3))では、ヨウ化物イオンがほぼ六方最密構造に近い配置をとり、層間の八面体型6配位位置にカドミウムイオンが収まるが、その収まり方は1層置きとなり、陰陽陰―陰陽陰―の各イオン層の積層構造になる。そのため、陰イオンどうしの接する層間での劈開(へきかい)がおこりやすく、カドミウムイオンとヨウ化物イオンの間の結合も共有性が強くなる。
 塩化鉛()型では、鉛イオンは塩化物イオン9個によって正方面冠三方柱形に配位され、Pb-Cl原子間距離は共有結合性を示すとともに、著しく不均化する。これらのように、一見イオン結晶的に考えられる組成の無機化合物でも、構成原子の組合せによってさまざまな構造が現れる。[岩本振武]
その他の結晶構造型
酸化物に限定して例示すると、AO3型酸化物の酸化レニウム()ReO3では、Oを頂点とする正八面体型のReO6単位が互いに頂点を共有して単純立方格子をつくる三次元構造をとる(図Dの(1))。酸化タングステン()WO3ではこの構造にひずみを生じて単斜晶系となる。タングステンと同族のモリブデンの酸化物MO3では、ひずんだMoO6八面体単位が稜(りょう)あるいは頂点を共有する二次元の層構造をとり、結晶は積層構造の斜方(直方)晶系となる。
 ABO3型酸化物の一例に灰(かい)チタン石(ペロブスカイト)型構造(図Dの(2))がある。灰チタン石は主成分CaTiO3の複酸化物鉱物であるが、イオン半径が大きいA陽イオン(この場合はカルシウム)が単純立方格子をつくり、その面心の位置に酸化物イオンが入り、立方体の中心にイオン半径の小さいB陽イオン(チタン)が収まる。理想構造では立方晶系になるが、実際の化合物では正方晶系、三方晶系、あるいは斜方(直方)晶系にひずむものが多い。灰チタン石ではAは2価、Bは4価の陽イオンであるが、Aが1価、Bが5価の陽イオンとなる組合せでもこの構造をとる例が知られている。
 AB2O4型酸化物の代表的な一例であるスピネルは主成分MgAl2O4の鉱物で、立方晶系に属している(図Dの(3))。単位胞は、酸化物イオンの面心立方格子がabc3軸方向にそれぞれ2単位連結した、計8個分に相当する体積をもち、その中に8式量単位分が入る。原点は酸化物イオンによる正四面体型4配位の位置に置かれ、原点と等価な8個の位置にマグネシウムイオンが入る。アルミニウムイオンは正八面体型6配位の位置になる(1/4, 1/4, 1/8)とその等価点16個に入る。2価のAイオン、3価のBイオンの組合せによってこの種の構造をとる例は多いが、スピネルのAの位置にBの半分(8個)が入り、Bの位置に残りのBとAが入る逆スピネル型構造や、A、Bが無秩序に入る乱れスピネル型構造をとるものもある。一般にフェライトとよばれるものはMFe2O4型の複酸化物であり、鉄()イオンの半分がスピネルのAの位置に入った逆スピネル構造をとると強磁性になる。
 特殊な結晶構造をとるものの例に包接化合物がある。包接化合物は、ホストとよばれる主体構造が籠(かご)状、トンネル状などの空間をつくり、ゲストとよばれる比較的小さい分子がその空間の中に収まって生成する化合物であるが、ホストとゲストとの間に強い化学結合はなく、空間と分子の間で寸法と形が適合する場合にだけ生成する。[岩本振武]
『桐山良一著『無機化学構造』(1978・岩波書店)』

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世界大百科事典内の結晶構造の言及

【結晶】より

…これは結晶の微視的状態とよばれるものである。例えば図7のaは大円で表した原子と,その向かって左下側にある小円の原子との1組で構成単位を形成して,この単位が前後・左右・上下にそれぞれの方向ごとに定まったある間隔で繰り返して互いに平行に並んでいる結晶構造を示す。
[結晶格子]
 これらの単位は図7のaに便宜的に描いた破線の枠に従って配列しているとみることができるので,bのようにこの枠(これを空間格子,結晶格子あるいは単に格子という)を取り出して,それが限りない広がりをもつと理想化して考えることにする。…

※「結晶構造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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