精選版 日本国語大辞典 「品詞」の意味・読み・例文・類語
ひん‐し【品詞】
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文法上の記述、体系化を目的として、あらゆる語を文法上の性質に基づいて分類した種別。語義、語形、職能(文構成上の役割)などの観点が基準となる。個々の語はいずれかの品詞に所属することとなる。
品詞の名称はparts of speech(英語)、parties du discours(フランス語)などの西洋文典の術語の訳として成立したもの。江戸時代には、オランダ文法の訳語として、「詞品」「蘭語九品」「九品の詞」のようなものがあった。語の分類意識としては、日本にも古くからあり、「詞」「辞」「てにをは」「助け字」「休め字」「名(な)」などの名称のもとに語分類が行われていたが、「品詞」という場合は、一般に、西洋文典の輸入によって新しく考えられた語の類別をさす。品詞の種類、名称には、学説によって多少の異同もあるが、現在普通に行われているものは、名詞・数詞・代名詞・動詞・形容詞・形容動詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞・助詞・助動詞などである。これらのうちの数種の上位分類である「体言」「用言」などの名称、および下位分類である「格助詞」「係助詞」なども品詞として扱われることもある。なお、「接頭語」「接尾語」なども品詞の名のもとに用いられることもある。
それぞれの品詞に所属する具体的な語も、学説によって異同がある。たとえば、受身・可能・自発・尊敬・使役を表す「る・らる・す・さす・しむ(れる・られる・せる・させる)」は、山田孝雄(よしお)の学説では「複語尾」、橋本進吉の学説では「助動詞」、時枝誠記(もとき)の学説では「接尾語」とされる。現在の国語辞書では、見出し語の下に品詞名を記すことが普通である。ただし、圧倒的に数の多い「名詞」については、これを省略しているものが多い。
[鈴木一彦]
ギリシア語・ラテン語を源とする西洋文典においては、語を8種に分けるいわゆる8品詞が伝統的型であった。18世紀以降、英語の標準的な品詞は、冠詞・名詞・形容詞・代名詞・動詞・副詞・前置詞・接続詞・間投詞の九つとされている。このうち、冠詞と前置詞にあたるものは日本語にない。この西洋文典の品詞が江戸時代末期から日本文典に影響を与えた。たとえば鶴峯戊申(つるみねしげのぶ)『語学新書』(1831成稿)はオランダ文典に倣って、語を実体言(ゐことば)(名詞)・虚体言(つきことば)(形容詞)・代名言(かへことば)(代名詞)・連体言(つづきことば)(動詞などの連体形)・活用言(はたらきことば)(動詞)・形容言(さまことば)(副詞)・接続言(つづけことば)(接続詞)・指示言(さしことば)(「上を」「ほかに」の類)・感動言(なげきことば)(感動詞)の9種に分ける。田中義廉(よしかど)『小学日本文典』(1874)では、名詞・形容詞・代名詞・動詞・副詞・接続詞・感詞の7種に分け、助動詞・助詞は独立した品詞と認めていない。大槻(おおつき)文彦『広日本文典』(1897)に至って、和洋折衷の品詞分類としてもっとも穏当なものが示されている。助動詞・助詞(「弖尓乎波(てにをは)」と称している)を独立した品詞とし、名詞・動詞・形容詞・副詞・接続詞・感動詞と並べて八品詞とした。これが明治以後の教科文典の標準的品詞と目されている。
[鈴木一彦]
江戸時代末期までの、日本人の日本語に対する語分類の意識およびその実際について、おもなものをあげる。
(1)『万葉集』における「辞」。4175、4176番の「霍公鳥(ほととぎす)を詠む二首」の左注に、それぞれ「毛能波三箇辞欠之(これをかく)」「毛能波氐乎六箇辞欠之」とある。ここには、少なくとも「も・の・は・て・に・を」などの助詞を「辞」と名づけて他と区別していた意識がみられる。
(2)宣命(せんみょう)書きにおける大字・小字の区別。宣命・祝詞(のりと)においては、「今宣(のりたまは)(久(く))奈良麻呂(我(が))兵(いくさ)起(おこす)(尓(に))被雇(やとはえ)(多利志(たりし))秦等(はたども)(乎婆(をば))遠(久(く))流(之(し))賜(たまひ)(都(つ))」(宣命)のように表記され、助詞・助動詞・活用語尾などが、体言・語幹などと区別されて小文字(本来は右寄せまたは2行割りだが、ここではすべて( )の中に表示した)で記してある。これも語分類の意識の一つである。
(3)漢文訓読の表記。漢文訓読におけるヲコト点および送り仮名としての片仮名も前述の場合と同じと考えられる。
(4)注釈書・歌論書における助辞。平安時代末期から室町時代へかけてのこれらの書では、助詞・助動詞の類を「休め字」「助け字」とよんで、他の語と区別している。
(5)『天爾波(てには)大概抄』(鎌倉時代末成立か)の分類。ここでは語を正面から二分して、「詞」と「手爾波」とし、両者の本質的な相違を説いている。この考え方は江戸時代を通じて基本的なものとなる。
(6)富士谷成章(なりあきら)『挿頭(かざし)抄』(1767)、『脚結(あゆひ)抄』(1773)。語を二分法によらず、
のように4種に分類する。これは、明治以後山田孝雄の文法学説に影響を与えた。
(7)鈴木朖(あきら)『言語四種(げんぎょししゅ)論』(1824刊)。3種の詞と「テニヲハ」に二分して、その本質的相違を説く。
この考え方は、昭和の時枝誠記の学説に大きな示唆を与えた。
[鈴木一彦]
parts of speechというとき、partは、印欧語ではほとんど語に一致する。ところが日本語では、「私は山に登った」の場合、文を構成する直接の部分は、「私は」「山に」「登った」という句(あるいは文節)となる。つまり品詞分類と語分類との間にあるギャップが生じてくる。助詞・助動詞および連体詞・副詞・接続詞・感動詞などの位置づけが問題となるゆえんがここにある。
[鈴木一彦]
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