改訂新版 世界大百科事典 「六御県」の意味・わかりやすい解説
六御県 (むつのみあがた)
大化前代に,奈良盆地に置かれていた宮廷直轄領。倭六県(やまとのむつのあがた)ともいう。添(そふ),山辺(やまのべ),磯城(しき),十市(とおち),高市(たけち),葛城(かつらぎ)の六つの県(あがた)は,特に,六御県と称された。それぞれの御県神社が,式内社として存在している。県の範囲は未詳であるが,高市御県については,橿原市四条町に高市御県神社,橿原市雲梯町に高市御県坐鴨事代主神社が所在することから,その範囲は郡より狭く,郷程度だったかと思われる。645年(大化1)8月,東国等国司の任命とともに,倭六御県にも使者が遣わされ,戸籍を造り,田畝を校ずることが命じられている。ここにも,倭の六県が大化前代において宮廷の重要な経済基盤であったことがうかがえよう。祈年祭の祝詞などに,六御県から甘菜,辛菜が貢上されることがみえるので,大化後においても何らかの実態を保ち,そのため六御県の呼称が残ったものと考えられる。
執筆者:和田 萃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報