改訂新版 世界大百科事典 「兵士の物語」の意味・わかりやすい解説
兵士の物語 (へいしのものがたり)
L'histoire du soldat
ストラビンスキー作曲,ラミュCharles-Ferdinand Ramuz(1878-1947)台本による1918年の音楽劇。〈読まれ,演じられ,踊られるà réciter,jouer et danser〉という副題をもつこの作品は,西洋の伝統的な大道芝居や旅回りの劇場を生かす音楽劇として構想され,朗読,パントマイム,バレエ,人形劇などさまざまな場面によって構成されている。ストラビンスキーと詩人ラミュの共同作業によって作られた物語は,ロシアの伝説によるもので,休暇をもらって帰省中の兵士が,魔法の本と引換えに悪魔に魂を売り渡してしまうというもの。ストラビンスキーは,7人の演奏家からなる室内オーケストラを用い,ラグタイム,ジャズ,タンゴ,ワルツなどの舞曲のリズムを生かして,それまでにない斬新な音楽を作った。全2部6景からなり,《兵士の行進曲》《小川のほとりの楽曲》など11曲の音楽が,劇の進行に応じて反復されながら使われている。演奏会用の組曲として音楽だけが演奏されることが多いが,この作品は,1920年代の音楽劇に大きな影響を与えた。
執筆者:船山 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報