日本大百科全書(ニッポニカ) 「内視鏡的粘膜下層剥離術」の意味・わかりやすい解説
内視鏡的粘膜下層剥離術
ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ
endoscopic submucosal dissection
胃や食道、大腸などの消化管にできた腫瘍(しゅよう)性病変に対して行われる、内視鏡を用いた治療法の一つ。英語名称を略してESDともよばれる。局注液(ヒアルロン酸や生理食塩水など)を注入しながら高周波メス(ナイフ)などを使って病変の周り全体の粘膜を切開し、粘膜下層を直接はがして病変を一括切除する方法である。剥離した潰瘍(かいよう)面に対して、出血があれば止血処置をあわせて行う。
ポリープ切除術の一つであるポリペクトミーでは切除できない扁平(へんぺい)な病変を切除するために考案された手技として内視鏡的粘膜切除術(EMR)があるが、広い範囲の病変などを一括で切除できない欠点があった。ESDはその発展型で、切除する形や大きさを比較的自由に選択でき、EMRでは困難であった大型の病変や潰瘍瘢痕(はんこん)をもつ病変にも対応可能である。切除した組織は病理診断にて、がんの有無、がんの深達度や範囲について評価がなされる。ESDはEMRに比べ技術的には高度で、手技に要する時間も比較的長く、出血や消化管に孔(あな)があく穿孔(せんこう)などを伴いやすいという欠点もある。穿孔をきたした場合には内視鏡下で縫合が行われるが、腹膜炎などにより開腹手術が必要となることもある。
[渡邊清高 2019年5月21日]