日本大百科全書(ニッポニカ) 「冷凍血液」の意味・わかりやすい解説
冷凍血液
れいとうけつえき
血液を冷凍して永久保存用にしておき、必要なときに溶かして輸血に用いる目的でつくられたもの。ちょうど、新鮮な魚を冷凍してしまっておき、食べたいときに常温に戻して料理するのと似ている。保存血液はせいぜい4週間が限界であるが、冷凍血液は永久保存に耐えられる。もともと細胞を冷凍にすると、氷の結晶ができたり、細胞内の電解質が濃縮したりして、細胞が破壊されてしまう難点があった。これを解決したのは、グリセリンを添加することと、使用時に5%果糖液でグリセリンを除去することによって行われた。実際には採血した血液を遠心法で濃縮赤血球液をつくり、79%グリセリン加保護液を等容量ずつゆっくり混合し、超低温槽内で1分間に1℃ぐらいの速度で零下80℃まで冷却して保存する。急速冷凍の場合は、液体窒素槽内で零下196℃まで下げて保存する。冷凍から戻すときは40℃で解凍し、糖液を混ぜてグリセリンを除き、赤血球70%の濃縮浮遊液をつくって用いる。
最近では、血球、血漿(けっしょう)成分をそれぞれの成分別に分けて、赤血球、白血球、血小板、骨髄細胞、抗血友病グロブリンなどが冷凍保存され、それぞれの目的にあわせて冷凍から戻して使用できるようになった。
[伊藤健次郎]