日本大百科全書(ニッポニカ) 「労働集約型産業」の意味・わかりやすい解説
労働集約型産業
ろうどうしゅうやくがたさんぎょう
labor-intensive industry
生産要素に占める資本の割合が低く、労働との結合度の高い産業のこと。労働者1人当りの設備投資額(=労働の資本装備率)の低いものを一般に労働集約型産業とよぶ。反対概念は資本集約型産業。労働集約型産業は、農林水産業など第一次産業と流通・サービス業など第三次産業に多く、その諸作業の機械化には、製造業に比べて、多くの制約が存在する。わが国の場合、農林水産業でも二次加工部門を中心に資本装備の高度化が図られてはいるものの、欧米に比べ、零細経営が支配的であるため、労働集約型産業からの脱皮にはほど遠いのが実情である。製造業では、軽工業部門に多く、生産技術の観点からみると、繊維、雑貨など労働集約型産業の製品は「低加工度型製品」(資本集約型のそれは「高加工度製品」)とよぶこともできる。流通面では、経済の高度化を背景に流通合理化や物流革新が急展開しているものの、なお合理化の余地は大きい。サービス業では、企業関連サービス業を中心に省力化が進行しているものの、消費関連サービス業ではホテル、旅館、飲食店などレジャー産業を中心に労働集約型が圧倒的比重を占めている。
[殿村晋一]