日本大百科全書(ニッポニカ) 「動物写真」の意味・わかりやすい解説
動物写真
どうぶつしゃしん
野生動物、保護されている半野性動物、動物園で飼育されている動物、犬・猫などのペットを対象とした写真。アメリカではネイチャー・フォトの一分野に入れられているが、日本では独立した分野として広く親しまれてきた。また昆虫写真は、動物写真のなかでも特殊な分野とされる。
動物の生態観察記録が第一義的だが、観賞目的の作品も多い。基本的には人間と動物とのメッセージの交換ということが動物写真の新しい視点となってきた。歴史的には、対象が機敏なためにメカニズムの進歩が必要であり、まずイドウィアード・マイブリッジが連続撮影手法を開発して1870年代の終わりから馬、犬、鳥などの撮影に成功し、またエティエンヌ・ジュール・マレーも高速度写真を開発してやはり動物を撮った。また感材も湿板法にかわって、ゼラチン乾板が1870年初期に出て露出時間が短縮され、技術的に進歩したことも見逃せない。さらに1880年代にはコダック社がハンドカメラを出し、またセルロイド製のロール・フィルムも実用化されて、対象が広がり、手法も多彩化した。しかしアフリカなどの野生動物撮影が軌道にのるのは1930年代初めのことである。
[重森弘淹]
『S・ドルトン著『瞬間をとらえる――生物ハイスピード写真集』(1983・小学館)』