主題。音楽においては、楽曲または楽章のもっとも中心となる楽想をさし、ソナタ形式の曲、フーガ、変奏曲に関して多く用いられる。テーマの表現形態は、個人や時代によってきわめて多様である。一般的に18世紀以降の西洋音楽のテーマは、楽想の最初の表現であり、リズム、旋律、和声の三要素の点で際だった性格を示しながら、音楽的なまとまりをもち、いくつかの小さな楽想(動機)から構成されている。
テーマの機能は、楽曲または楽章の出発点であるとともに、反復や変奏を通じて全体を統一することにある。たとえばフーガでは、原則として一つのテーマが提示され、各声部に順次模倣される。そして変奏曲は、さまざまな手法によるテーマの変形や装飾に基づく楽曲である。ソナタ形式は、通例フーガや変奏曲より多数のテーマをもつ。この場合、提示部で提示された二つまたはそれ以上のテーマ(登場順に第一主題、第二主題などとよぶ)は、展開部でいくつかの動機に分解され、主題労作の手法で展開される。しかし、ロマン派の時代には単一のテーマから楽曲を編み出すことが好まれるようになり、テーマをよりいっそう性格化した固定楽想を楽曲構成の基礎にすることも行われた。このように、テーマは機能の重要性において楽曲や楽章を代表しており、J・S・バッハやモーツァルトらの主要な作曲家に関しては全作品の主題目録が作成されている。
[寺本まり子]
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…研究や論文あるいは芸術作品など人間の精神的作物の中心となる題目をいう。〈テーマ〉(ドイツ語Thema,英語theme,フランス語thème)の訳語でもあるが,これはギリシア語tithenaiに由来し,〈置かれたもの〉を意味している。人間が思想を展開するときには集めた素材を自分独自の観点から統一するが,その統一の中心に置かれるものこそ主題にほかならない。…
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