ある区間の各実数tに対し曲面Stが定められているとする。このとき別の曲面Eがあって,Eの各点Pにおいて,EとあるStとが接しているならば,Eを曲線族{St}の包絡面という。例えば,空間の1直線上に座標が与えられたとき,各実数tに対しStはその直線上の座標tの点を中心とする半径rの球面であるとすれば,包絡面はその直線を軸とし底面の半径がrの直円柱面である(図)。関数F(x,y,z,t)が与えられれば,各tに対しF(x,y,z,t)=0で表される曲面Stが定まる。このときF=0,∂F/∂t=0からtを消去して得られるx,y,zに関する方程式は{St}の包絡面か,またはStの特異点(すなわち∂F/∂x=∂F/∂y=∂F/∂z=0を満たす点)の軌跡を表す。包絡面EとStとはそれらの交線Ctで接している。Ctを曲面族{St}の特性曲線という。各Stが平面で,それらは平行でないときは,特性曲線は直線となり,包絡面はそれを母線とする柱面,錐面,または接線曲面となる。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報