化学吸着(読み)カガクキュウチャク

化学辞典 第2版 「化学吸着」の解説

化学吸着
カガクキュウチャク
chemisorption

固体表面とこれに接する均一相内の分子との化学的結合によって生じる吸着.化学吸着では,吸着分子内の結合の切断や二重結合の開裂と,これに続く表面原子との間の新しい結合生成,あるいは吸着分子,固体の空準位への電子移動が行われるものと考えられる.したがって,吸着分子と表面との組合せは選択的であり,吸着は単分子層を越えない.吸着結合のエネルギーが大きいため,吸着分子の解離などによるエネルギー損失を差し引いても吸着による発熱は大きく,50~500 kJ mol-1 の値を示す.吸着系によっては,活性化エネルギーを必要とする活性化吸着となる.この場合,吸着速度物理吸着よりいちじるしく遅いが,高温となるにつれて速度は増大する.単純な分子について,吸着エネルギーが原子価結合法あるいは分子軌道法を用いた量子化学的計算で近似的に求められている.また,触媒反応の初期過程として,適度の強さの化学吸着を生じることが必要であると考えられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の化学吸着の言及

【吸着】より

…通常は,とくに固体表面において,それに接する気相または液相中の特定成分が濃縮される現象,すなわち正吸着を単に吸着と呼ぶ。吸着される成分が固体表面と化学的な強い結合をする場合を化学吸着と呼び,金属上の酸素や水素等の吸着が例としてあげられる。これは表面での金属と気体との化学反応と考えることができ,吸着時の発熱が大きく,簡単に気体が金属から離れることはない。…

※「化学吸着」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android