改訂新版 世界大百科事典 「単分子層」の意味・わかりやすい解説
単分子層 (たんぶんしそう)
monomolecular layer
monolayer
セッケンの主成分である脂肪酸塩(たとえばステアリン酸ナトリウムC17H35COO⁻Na⁺)のごく少量を純水に加えると,脂肪酸イオンは水表面に集まり,水になじまない炭化水素鎖を上(空気側)に,カルボキシル基を下(水側)に向けて,水-空気界面に並ぶ。表面積当りの脂肪酸塩濃度が十分に低いと,脂肪酸塩分子は表面を自由に動きまわるが,濃度が高くなると,表面(水-空気界面)にぎっしりと並ぶ。このように分子が液体または固体の表面(あるいは界面)につくる分子の直径程度の層を単分子層,一分子層または単分子膜monomolecular filmという。単分子層をつくる分子は,水表面の脂肪酸塩のように,定まった方向に配向することが多いので,特有の性質を示す。たとえば水表面上の脂肪酸塩単分子膜の形成によって,水の表面張力が著しく低下する。清浄な固体表面への気体あるいは液体分子の吸着によっても単分子層がつくられ,潤滑作用や触媒作用などを示すことがある。金属が酸化(腐食)する場合,初めに酸素分子が金属表面に吸着され,酸化物の単分子層ができる。この酸化物層が腐食の進行を妨げることもある。
執筆者:妹尾 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報