日本大百科全書(ニッポニカ) 「化物問答」の意味・わかりやすい解説
化物問答
ばけものもんどう
昔話。化物と問答をして言い負かすことを主題にした化物話。侍(さむらい)が化物寺に泊まる。夜が更けると、光り物が現れ、「そくへいたんは居(い)るか」と仲間の化物をよぶ。侍が「おまえは何者か」というと、光り物は「東原(とうげん)の馬頭(ばとう)」と答える。侍が「東の原の馬の頭の化物などこわくない」というと退散する。以下、「西竹林(さいちくりん)の三足鶏(さんそくけい)」「南海の大魚」「北池の蟇(がま)」が現れるが、同様にして撃退する。寺の中の化物の正体を探すと、縁の下に古下駄(げた)がある。「そくへいたん」はこれに違いないと焼き捨てると、化物は出なくなる。化物の正体を見抜くことが退治する要件で、「大工と鬼六(おにろく)」でも、鬼の名を言い当てると鬼は消えている。大入道が、「小足(こあし)八足、大足(おおあし)二足、色紅(くれない)にして、両眼天に輝くこと日月のごとし」と謎(なぞ)ことばで名のったのを、蟹(かに)と言い当てると、化物は消えたという「蟹問答」も、同じ類型に属する昔話である。漢語の化物の名称や謎ことばなど、文芸としての興味が強い。古風な信仰を土台にしながら、寺僧など職業的な物語の語り手によって語り広められた話であろう。蟹の謎ことばは、すでに能狂言の『蟹山伏』にみえる。「二眼(じがん)天にあり、一向地に着かず。大足二足(たいそくにそく)小足(しょうそく)八足、右行左行(うぎょうさぎょう)して遊び者の精にてあるぞとよ」とある。
[小島瓔]