南海(読み)ナンカイ

デジタル大辞泉 「南海」の意味・読み・例文・類語

なん‐かい【南海】

南方の海。また、そこにある島や国。「南海楽園

南海道」の略。
中国で、南方にある地域海域呼称。転じて、東南アジア諸国をさすが、インド洋沿岸地方を含めることもある。
[類語]東海西海北海

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精選版 日本国語大辞典 「南海」の意味・読み・例文・類語

なん‐かい【南海】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 南方の海。古くは紀伊半島、四国沖の海をさして用いることが多い。
      1. [初出の実例]「神のたすけあらば南海にふかれおはしぬべし」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 南洋の海。また、そこにある国。南国。
      1. [初出の実例]「南天竺より東大寺供養の日にあはむとて南海より来れり」(出典:観智院本三宝絵(984)中)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ]なんかいどう(南海道)」の略。
      1. [初出の実例]「我将南海飽風煙、更妬他人道左遷」(出典:菅家文草(900頃)三・北堂餞宴)
    2. [ 二 ] ( 江戸城の南にあたるところから ) 江戸時代、品川の遊里をしゃれていう語。
      1. [初出の実例]「所々よりあつまりたるいへいへなれば風義同じからずたいがい南海をうつせり」(出典:洒落本・契国策(1776)西の方)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南海」の意味・わかりやすい解説

南海
なんかい

中国の南方に存在する海、さらにその沿岸の諸国、またその海を航行して来貢する諸国。南シナ海の中国での名称としても使われる。中国人の地理的知識と、交易地域の拡大とともに、南海の意味する地域は広くなった。秦(しん)代、いまの広東(カントン)、広西地方に置かれた郡を南海郡と名づけたのが、この用語の始まりで、しだいに、インドシナ半島マレー半島から、さらにジャワボルネオスマトラ諸島に広がり、フィリピン群島にも及んだ。11世紀以後は、インド洋を越えて、ペルシア湾、紅海からアフリカの一部などの沿岸諸国をも意味するに至った。南宋(なんそう)の『嶺外代答(れいがいだいとう)』『諸蕃志(しょばんし)』、元の『真臘風土記(しんろうふどき)』、明(みん)の『瀛涯勝覧(えいがいしょうらん)』『東西洋考』などは、当時の中国人の海外への好奇心が生んだ著作であるが、これらによって南海が、時代を下るにつれて拡大する事情がわかり、南海の中国史上の意義をうかがうことができる。

[星 斌夫]

『石田幹之助著『南海に関する支那史料』(1945・生活社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「南海」の意味・わかりやすい解説

南海 (なんかい)
Nán hǎi

本来は中国の南方にある海,つまり南シナ海のことであるが,南海を通じて中国と往来する国々または海港をも意味する。秦の始皇帝のとき前214年に南方を征服し,今日の広州に南海郡をおいたのは,そこが南海への連絡口だったからである。のちには南シナ海の南部からインド洋にわたる海域を南洋と称し,広州または泉州福建省)から南に伸ばした一線によってこれを東西に分け,東洋,西洋といった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「南海」の意味・わかりやすい解説

南海
なんかい
Nan-hai

東南アジア地域に対する古代中国人の呼称。時代により用語の示す地域が異なる。前 214年,秦の始皇帝は嶺南の地を経略して,その地に3郡 (桂林,南海,象) をおいた。その一つ南海郡は広東地方を占め,南シナ海に面し,象牙,犀角,タイマイ (大亀甲) などの貿易中心地であった。のちにはこの地に南シナ海を通じて来航する国々をも広く南海と呼ぶようになり,インドシナ半島,マレー半島,インドネシアの諸島,フィリピンなどの諸地域を含むようになった。さらに中国人による交易地域の拡大によって,インド洋,アラビア海,ペルシア湾,紅海などの沿岸諸国をも含むようになった。後世,西洋,南洋などの語が南海に代った。

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百科事典マイペディア 「南海」の意味・わかりやすい解説

南海【なんかい】

中国大陸南方の海とその沿岸の古称。また,中国から南方へ発して海路で到達しえた東南アジア・南アジア・西南アジアや東アフリカ沿海諸島をもさした。現在の用法は前者に近く,日本でいう南シナ海に当たる。

南海【なんかい】

中国,広東省珠江デルタ北部にある仏山市の一区。123万人(2014)。

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旺文社世界史事典 三訂版 「南海」の解説

南海
なんかい

初め中国の南方にある海つまり南シナ海を意味したが,のち南海を通じて中国と往来する地域インドシナ・マライ・フィリピン・インドネシアなどをさすようになり,さらにこの地域を通じて交易したインド・ペルシア・アラビア地方まで含めるようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の南海の言及

【アシエント】より

…イギリスは以後30年間,毎年4800人の奴隷を供給し,毎年1回商品貿易に従う〈年次船〉500トンを派遣する権利を得たのである。イギリス政府はこれを南海会社にゆだねたが,会社は予想したほどの利益をあげえず,〈年次船〉の行う密貿易が紛争の火種となってスペインとの間に戦争さえ起こったので,1750年には放棄し,アシエントもその歴史的役割を終えた。【川北 稔】。…

【株式会社】より

… 1718‐20年,パリもロンドンもアムステルダムも空前の株式ブームにわいた。このブームとその崩壊はともにパリから始まったが,フランスではジョン・ローのミシシッピ泡沫事件(1720),イギリスでは南海泡沫事件(1720)という二つのドラマティックな事件をひきおこした。ミシシッピ川流域との貿易を独占するジョン・ロー設立の特権的貿易会社の株がパリで投機の渦中にあったとき,イギリスでは中南米沿岸と西アフリカで貿易および開発の特権を与えられた南海会社(1711設立)の株が急上昇を続け,20年6月のピークには額面100ポンドの株が1050ポンドにも跳ね上がった。…

【カンパニー制度】より

… 特許会社としてのカンパニーは,絶対王政などによってそれぞれの独占権を保障された〈初期独占〉体であったから,16世紀末以降,議会の〈反独占闘争〉の矢面に立たされ,市民革命の前後に事実上力を失う。東インド会社のように,改組されてむしろ18世紀に繁栄したものもあれば,新世界への奴隷供給を任務とした王立アフリカ会社(1672設立)やアシエント契約によるスペイン領新世界との貿易を策した南海会社(1711設立)のように,王政復古以後に成立したものもあるが,あまり成功しなかった。そのうえ,1720年,南海会社に関連して株式パニック〈南海泡沫事件〉が起こると,〈泡沫会社禁止法〉が出され,株式会社の新設に厳しい制限が設けられる。…

【南海泡沫事件】より

…1720年に起こった南海会社South Sea Companyの株価大暴落を契機とするイギリスの大恐慌。南海会社は1711年に,スペイン領中南米との奴隷その他の商品の取引を目的とし,またスペイン継承戦争でふくれ上がった国債の低利債への転換をも目的として設立された。…

【東南アジア】より

…また古代インド人は,この地を〈黄金の地Suvarṇabhūmi〉〈黄金州Suvarṇadvīpa〉と呼んだ。一方,中国人はこれを〈南海〉と総称していた。南方の海を経由して中国に朝貢した国々,あるいは中国人が南方の海を経て到達することのできた国々の意である。…

【南シナ海】より

…中国では南海と呼ばれ,中国三大辺海の一つ。北は台湾および中国南部,東はフィリピン諸島,西はベトナムで囲まれ,ほぼ北緯10度線を境として南のボルネオ海とつらなる。…

※「南海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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