北海油ガス田群(読み)ほっかいゆガスでんぐん

改訂新版 世界大百科事典 「北海油ガス田群」の意味・わかりやすい解説

北海油・ガス田群 (ほっかいゆガスでんぐん)

1959年にオランダフローニンゲン・ガス田が発見されたのを契機として,北海におけるその延長部の探鉱が注目を集めるに至った。北海における最初の探鉱成果は65年に発見されたウェスト・ソールWest Soleガス田をはじめとするいくつかの構造性ガス田の発見であり,72年までにはパイプライン網の完成によって国内消費者への供給が開始された。1970年にはノルウェー海域で最初の北海油田エコフィスクEkofiskが発見され,その後短期間内にノルウェー,イギリス,デンマークの中間線沿いにいくつかの油田が発見された。次いで71年に北緯61°以北でブレントBrent油田が発見され,この油田地帯がさらに北方まで延長していることが期待されるようになった。

 北海南部のイギリス海域では12のガス田が発見されたが,そのうち5ガス田はかなり大きい。最大はレーマンLeman(埋蔵量約0.3兆m3)で,次いでインデファティガブルIndefatigable(約0.13兆m3),ヒュウェットHewett(約0.1兆m3)等で,総埋蔵量は約0.8兆m3と推定される。オランダ海域でもいくつかのガス田が発見されているが,同国はその開発を急いでいない。ドイツおよびデンマーク海域でも小ガス田が発見されている。ガス層はフローニンゲン・ガス田と同様,古生代末期の砂岩である。北海南部海域は水深100m以下(大部分は30~60m)と浅く,探鉱,開発作業は比較的容易である。

 一方,北海北部海域でも厳しい気象・海象条件にもかかわらず,きわめて活発な活動が行われている。1995年時点でイギリス海域では46油田から約280万バレル/日の生産が行われており,このなかには埋蔵量10億バレル以上の5巨大油田が含まれる。すなわち,フォーティーズForties(26億バレル),ブレント(20億バレル),ニニアンNinian(12.6億バレル),ベリルBeryl(15億バレル)およびパイパーPiper(10億バレル)である。この海域の総埋蔵量は200億バレル以上と推定される。ノルウェー海域では22油田から約290万バレル/日の生産が行われている。このうちスタットフィヨルドStatfjordは,約39億バレルの埋蔵量をもち,北海最大である。これに次ぐのがエコフィスク(23億バレル)である。オランダ海域最初の生産施設が82年末にヘルダHelda油田で完成し,現在3油田からの生産が行われている。北海北部の地質はきわめて複雑で,最初石油が発見されたエコフィスク油田の油層は中生代白亜系と新生代の古第三系との中間層に相当する。次いでフォーティーズ,モントローズMontrose油田等で新第三系下部の砂岩油層が,また,ほぼ同層準における天然ガスがフリッグFrigg,オーディンOddin等で発見された。もう一つの大きな油層層準は中生代のジュラ系であり,これに属するのはスタットフィヨルド,パイパー等である。

 北海には現在約100基の海洋石油生産施設が建設されているが,このうち19基は1970年代から導入されたコンクリート重力型プラットホームである。このタイプの構造物の建造費はスチール・プラットホームに比べて著しく高く,スタットフィヨルドCプラットホームは重量79.5万t,建造費20億ドルに達する。北海では各油田の埋蔵量が比較的大きいという好条件があり,またコンクリート・プラットホームは建造・設置に要する期間が短いこと,約30mの波高にも耐えられること,貯油能力が大きいこと等も重要な利点であるので,この海域では広く採用されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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