埋蔵量(読み)まいぞうりょう(英語表記)reserves

翻訳|reserves

改訂新版 世界大百科事典 「埋蔵量」の意味・わかりやすい解説

埋蔵量 (まいぞうりょう)
reserves

地殻までの地下に存在する物質の量。通常,資源の量をいい,資源または鉱床の質により,それが金属および石灰石鉱床ならば埋蔵鉱量または単に鉱量,石炭ならば埋蔵炭量または単に炭量などという。一方,鉱床とは収益性を伴う鉱物の集合体と定義されているが,市況や技術水準が変われば採算性の算定も変わり,したがって鉱床の定義も一定しなくなる。そこで日本ではJISによって各種鉱物の予想しうる最低採算限界を定め,この最低限界のもとで採算鉱となりうる限界の鉱物群の量を埋蔵量と定義することにしている。埋蔵量は,その確実度によって,確定,推定,予想の3種類に分類されるが,その判定にあたっては,探鉱・探査を目的とした坑道,掘進,トレンチング,および坑内外からのボーリングなどの結果が参考にされる。要するに,地下に賦存する鉱床の容積品位が,ある区画内において,確実にされた部分から算出された場合を確定埋蔵量というが,現実の開発の状況,あるいは地質鉱床学的に,現在の鉱床の範囲や容積,および品位の状況が,確実に連続性ありと認められた部分についても,場合によっては加算できる。これに対して,区画によって鉱床状況の確認はされていないが,容積や品位が十分に推定しうる部分の量を推定埋蔵量とする。また確定量や推定量としては断定できないが,地質鉱床学的に,その存在,容積,品位が予想される部分の量が予想埋蔵量である。ここで確定埋蔵量算定の場合には〈区画〉のとり方が問題になることがわかる。

 金属鉱床の鉱量計算基準によると,確定鉱量の算定は,鉱床の形状によって次のように区別されている。(1)鉱脈(脈状鉱床)では,上下2本の𨫤押(ひおし)坑道と,これらを連絡する2本の坑井の各壁面に現れた鉱床の4側面で囲まれた部分。ただし確認のための最小区画としては,𨫤押坑道の上下鉛直間隔は30m以内,坑井間隔は60m以内であること,また鉱脈の傾斜が45度以下ならば,𨫤押坑道上下間の間隔は傾斜に沿った30m以内であること,などを標準とする。(2)層状鉱床では,鉛直間隔30m以内の上下𨫤押坑道の壁面に現れた鉱床断面で囲まれた部分。鉱床傾斜が45度以下ならば,𨫤押坑道の間隔は傾斜沿いに30m以内とする。(3)塊状鉱床の場合は,ほぼ平行な2断面で囲まれた部分である。ここで平行な2断面とは,平行な2平面,または曲面上にある坑道,坑井,斜坑,またはボーリング孔に現れた鉱床断面をいう。またこれら二つの平行面の間隔は,そこに現された鉱床断面の最大径と最小径の算術平均値よりも小さくなければならない。

 石炭鉱床(炭層)の場合も,算定の基本的考え方は前述の鉱量算定法と同じであるが,金属鉱床よりも炭層の場合は一般に連続性があるので,現在確認されている炭層位置,すなわち確定炭量の部分から遠ざかるにつれて,賦存の確実度が低下するという原則のもとに,比較的大略的に推定,予想炭量の区分がなされる。ただし,現在の採炭深度水準にあるものについては第1類(確定炭量は,さらに確度の高いものを確定炭量第1類甲,以下を第1類乙とする),将来の採炭深度水準の部分については第2類の名称が,各区分ごとに付加される。
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原油および天然ガスの埋蔵量(鉱量,埋蔵鉱量ともいう)とは,油ガス層内に存在する炭化水素の量を,地表の標準状態での原油と天然ガスの体積に換算したものをいう。その計算基準はJISに規定されている。埋蔵量は原始埋蔵量総鉱量ともいう)と可採埋蔵量可採鉱量ともいう)とに分けられる。原始埋蔵量とは,生産が開始される以前の,発見された当初に油ガス層内に存在していた原油,天然ガスの総量をいう。可採埋蔵量とは,計算時点以降に妥当な経済的・技術的条件で採収しうる量である。生産開始時の可採埋蔵量,あるいは生産開始後のある時点の可採埋蔵量にそれまでの累計生産量を加えたものを総可採埋蔵量という。原始埋蔵量および可採埋蔵量は,油ガス層の存在の確実度および算出値の信頼度の程度によって,確認(石炭や金属の埋蔵量の〈確定〉という用語に相当するが,炭化水素は流体であるために,固体鉱物の場合よりも判断しにくい要素が多いのでこの用語が使われている),推定および予想の3種類に分けられている。可採埋蔵量は,原始埋蔵量に採収率(回収率)を乗じて求められる。可採埋蔵量は,天然のエネルギーによって生産される一次可採埋蔵量と,一次回収作業に引き続いて油層に人為的な刺激を加えることによって生産される二次・三次可採埋蔵量とに区分される。最近は二次・三次回収法を油田開発の初期から適用することも少なくないので,実際にこれらによる回収量を区分することが難しい場合もある。しかし二次・三次回収法の経済性を判定するためには,一次可採埋蔵量の算定が必要である。

 埋蔵量の計算法としてJISでは,油層および遊離形ガス層については,容積法,物質収支法および減退曲線法によるものとし,水溶形ガス層については容積法だけを規定している。油ガス層発見の直後あるいは開発の初期において,埋蔵量を算出するのに使用できる方法は容積法だけである。この方法では,まず油層の分布範囲,次いで油層の全容積を求める。一つの油田のなかに数多くの油層が分布する場合があり,このときにはそれぞれの油層における油の分布範囲を判定するために多くの探掘井が必要となる。次に貯留岩孔隙率を求め,さらに孔隙内において油によって充てんされている割合(油飽和率)を求める。油層の全容積に孔隙率と油飽和率を乗ずれば,地下に賦存する油量を算出することができる。この油を地上まで採揚し,常温,常圧まで減少させたときの油の収縮度(容積係数)を測定しておけば,地下の油量を地上の油量に換算することができる。天然ガスの埋蔵量の算定もこれに準ずる。

 油田からの生産がある程度進んだ段階では,地下の油量を物質収支計算によって求めることができる。ここに既知の量の油,ガスおよび水を充てんしたタンクがあるものとし,それぞれの流体を決まった量だけ除去したとき,これによる圧力の低下を計算することは容易である。したがって逆に一定の流体を生産した後の圧力の変化を測定すれば,最初に地下に賦存する流体の量を計算することができる。しかし比較的小さい油ガス層の下位に大きな水層が接触しているときは,油に対して強い水押しが働くのが普通であるが,この場合には単純な物質収支計算をすることはできない。この方法はもともと密閉されたシステムにおける物質収支を取り扱うものだからである。したがってこの場合は適切な水の浸入量を仮定する必要があり,いくつかの方法が提案されている。油層から生産が長期間にわたって行われた後には,過去の生産推移を示す曲線の傾向を将来の経済限界まで外挿することによって,残留する可採埋蔵量を推定することができる。データのプロットによって得られる曲線の種類には,生産量-時間,累計生産量-圧力,累計生産量-水油比などがある。しかしこのような減退曲線法による分析は,減退期にある油田にしか適用できないという制約がある。また時間の経過とともに,排油のためのさまざまな地下エネルギーの相対的効果が変化したり,人為的に生産を制限して曲線がゆがんだりすることもあるので,その解釈にあたっては十分な注意を要する。

 人類が最終的に利用できる原油の究極資源量はだいたい2.1兆バレルというが,この値は必ずしも世界の専門家のコンセンサスを得たものではないにしても,一般にほぼ妥当と考えられている値である。このうちには累計生産量と現時点で確認されている可採埋蔵量(両者を加えたものを既発見埋蔵量という)および未発見資源量が含まれる。1995年末時点で,究極資源量のうち約1.7兆バレル(80%)は発見ずみで,約4000億バレル(20%)が今後の人類の努力によっては発見されるかもしれないという量である。既発見量のうち,95年末現在ですでに約7600億バレルは消費ずみで,残存する可採埋蔵量は約9200億バレルである。全究極量のうち,約1.6兆バレル(77%)は陸域に,約4600億バレル(23%)は海域に分布すると推定される。天然ガスの場合は,未発見の資源量が既発見量よりも多いことは石油地質学的に予想することができる。しかしその究極資源量に関する諸見解は原油の場合よりもいっそう多岐に分かれている。そのほぼ中央値をとると約330兆m3である。この究極量のうち,約200兆m3(61%)が発見ずみで,約130兆m3(39%)が今後発見を期待できる量である。既発見量のうち約63兆m3は消費ずみで,現在の確認可採埋蔵量は約137兆m3である。未発見量のうち,旧共産圏には約57兆m3が分布し,とくに旧ソ連の量が多く約52兆m3と推定される。自由圏の量は約73兆m3である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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