医療対話推進者(読み)いりょうたいわすいしんしゃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「医療対話推進者」の意味・わかりやすい解説

医療対話推進者
いりょうたいわすいしんしゃ

患者・家族支援体制の調整と対話促進のために、病院内の諸関係部門と連携し、組織的に患者・家族からの相談等に対応することを業務とする病院スタッフ。医療事故や医療上の係争事項が発生した際に、患者・家族と医療者が向き合う場を設定して当事者間の対話を促進し、両者の納得できる合意をもたらして信頼関係の再構築を支援するしくみを医療メディエーションという。このとき、問題解決のための当事者同士の自主的な対話を促進する仲介的役割を、医療対話推進者(医療メディエーター)が担う。医療対話仲介者あるいは医療対話促進者ともいい、患者やその家族らが表明する医療に対する不満や苦情などを問題として認識し、病院内の医療スタッフらも交えて原因を検討して、改善のための方策が講じられるように努力する。患者と医療者いずれかの立場を優先させて解決案を提示するのではなく、あくまでも当事者間の対話を仲介する役割に徹する。

 2008年(平成20)には「日本医療メディエーター協会」が設立され、厚生労働省から示された養成のための研修プログラム作成指針に基づく公的認定制度も始まった。また、同協会や日本医療機能評価機構などで、紛争分析や対話促進のための役割技法に関する基礎知識習得のほかロールプレイなどの体系化された養成プログラムにより、人材養成が行われている。認定の対象は医療専門職に限らないものの、医療機関職員に限定している。日本では、裁判など法的手続きを含む紛争解決には弁護士以外は従事できない規定となっているため、医療対話推進者は裁判以外の医事紛争の処理、すなわち医療ADR(Alternative Dispute Resolution)にあたることとなる。厚生労働省の業務指針に基づいて、2013年から各病院の相談窓口に1人以上が配置されるようになった。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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